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「こうあるべき」に左右されなかった“ストーン対決”
主演女優賞部門はずっとリリー・グラッドストーンとエマ・ストーンの“ストーン対決”だったが、授賞式が近づく中で、グラッドストーンを有力と見る向きが強まっていた。オスカー予想上、非常に重要な全米映画俳優組合賞(SAG)を受賞したのもグラッドストーンだった。
それでも筆者がずっとストーンを推してきたのは、スクリーンに出ている時間が圧倒的に長く、またスクリーンの中で見せる幅が広いからだ。ネイティブ・アメリカンの女優が受賞する初の例とならなかったのは残念ではあるけれども、アンソニー・ホプキンスがチャドウィック・ボーズマンに逆転勝ちした時と同様、アカデミーの投票者は実のところ「こうあるべき」ということに動かされず、正直に投票するのだとあらためて思った。
せめて脚色賞は『バービー』と予想したが…
脚色賞にも同じことが起きたと言える。『バービー』のグレタ・ガーウィグが監督賞部門に候補漏れしたことに強い批判が起きたのを受け、せめて脚色賞部門は彼女に取らせようと思う投票者が多いのではと見て、筆者は『バービー』の受賞を予測したのだが、結果は『アメリカン・フィクション』だったのだ。『アメリカン・フィクション』は個人的に最も好きな映画の1本なので、この受賞にはまるで異議なし。それにしても、8部門で候補入りした『バービー』がひとつ(歌曲賞部門)しか受賞しなかったというのはややがっかりだ。