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 では、なぜエネオス社員はそんなに酒を飲むのか。また、酒の席で失敗を犯すような人物がなぜ出世し、経営トップにまでなれるのでしょうか。

 まず、石油会社の仕事が「簡単である」という事実に着目する必要があります。石油製品の製造(精製)は、大きな技術進歩がなく、100年以上も前からほぼ同じ方法が続けられています。

 販売は、石油会社の社員が売るわけではなく、各地域の特約店がサービスステーションを運営して売ってくれます。石油会社の仕事は簡単かつ、もはや改善の余地も少ないので、ほかの社員よりも抜きん出た成果を上げるのは、まず困難です。

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 一般社員なら、できて当たり前の仕事をちゃんとできなかったら減点評価となります。では、プラスの成果で差がつかない状況で、エネオスは経営幹部をどう選抜するのでしょうか? ここでポイントになるのが、「仲間づくりと宴席」です。

 昔は労働組合の力が強かったので、組合幹部と酒を酌み交わし、手なずけるのが製造部門・人事部門にとって重要でした。有力特約店にヘソを曲げられては困るので、特約店の経営者を接待して機嫌を取ることが販売部門の“最大の仕事”でした。

 社員や特約店と酒を酌み交わして自分の仲間に引き入れると、「あの人は人望がある」と評判になります。ほかにこれといって評価項目がないため、評判が上がるだけで、幹部に引き上げられる傾向にあります。辞任した3人すべてが酒の席で不祥事を起こしたのは、このエネオスの特殊な社内風土を象徴しています。

かつては酒の失敗が「評判を高める」こともあった

 過去にも宴席での不適切行為はあったはずです。ところが当時は「たまにはそんなこともある」「誰でもやっている」と大目に見られ、出世にマイナスになりませんでした。むしろ、「あいつもなかなか人間臭いところがある」と評判を高めることすらありました。

 今回、エネオスの社外取締役らは、辞任した経営者たちの「倫理観の欠如」を問題にし、コンプライアンス体制を強化しています。しかし一方で、これでは根本解決にはならないと筆者は思います。

 それよりも、「仕事がデキる人」より「酒が飲めて仲間づくりが上手な人」を取り立てる評価・昇進の仕組みにメスを入れる必要があります。また、エネオスには経営を担える優秀な幹部候補が不足しており、経営人材の育成も急務です。

「しがらみのない新経営陣」には期待

 エネオスHDは2月28日、宮田知秀副社長執行役員が4月1日付で社長に就くと発表しました。

新社長の宮田氏(画像:エネオスホームページより)

 また、中核会社のエネオス株式会社の社長には、山口敦治執行役員電気事業部長が就任します。

 実は、この人事は「非日石」「製造系」という2つの点で異例です。