「パパが働いていたエネオスって、Hな人を優先的に採用してるの?」

 石油元売り最大手のエネオスHDでは、2022年に杉森務会長、2023年に斉藤猛社長、今年2月にグループ会社の安茂会長と3年連続で経営トップがセクハラ行為で辞任しました。

2022年に辞任した元会長の杉森務氏(画像:エネオスのニュースリリースより)
2023年に辞任した元社長の斉藤猛氏 ©getty
今年2月に辞任したグループ会社の前会長の安茂氏(写真:本人のSNSより)

 この前代未聞の問題は、なぜ起きたのでしょうか。また4月に刷新される経営陣には、どういう課題があるのでしょうか。

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多くの社員は真面目だが…

 冒頭の質問は、就活中の次女から尋ねられたものです。彼女以外からも最近は、「エネオス社員はモラルの欠けた人間ばかりなんですか?」という質問をよく受けます。

 しかし、実際のエネオス社員がモラルの欠けた人ばかりということは、断じてありません。OBゆえの贔屓かもしれませんが、筆者がコンサルタントとして携わった他の多くの企業と比べて、むしろエネオスには倫理観が高く、真面目な社員が多くいます。飲み会に参加しても、仕事や人事の話題が多く、下ネタなどはほとんど耳にしません。

 では、そんな倫理観が高く、真面目なエネオス社員の中でも出世競争を勝ち抜いた経営者が、なぜセクハラ行為に及ぶのでしょうか。それには「圧倒的に宴席の数が多い」こと、そして「宴席を利用して仲間づくりができる人が出世する社風」という2つの理由があると思います。

 筆者が日本石油(以下、日石)に在籍していた頃の部長クラスで「酒を飲まない」という人は皆無。半分くらいは「平日は毎日酒を飲む」という感じでした。年間250回酒を飲むとすれば、60代前半で経営者になるまでに1万回くらい酒を飲んでいる勘定です。

 読者の皆さんも100回酒を飲んだら、ときにはへべれけになったり、酒の失敗もあると思います。ズボラな人であれば立ち小便、乱暴な人なら器物破損、そしてスケベな人であればセクハラもありえるでしょう。

 年に250回も酒を飲んでいれば、どれだけ高い倫理観を備えた人でも不適切行為に及ぶ可能性は高まります。近年は当然エネオスでもコンプライアンス意識が高まり、内部通報制度も充実してきました。そのため以前なら、「このくらいは」と見過ごされてきた不祥事が問題視されやすい状況にあります。

 また、これまでに辞任した会長、社長といえば、会社の顔です。ほかの社員よりも高いモラルを求められるにもかかわらず、古い意識をアップデートできなかったことなどが一連の不祥事につながったのではないでしょうか。