エネオスの元になったのが日本石油。日石は1999年に三菱石油、2008年に九州石油、2010年にジャパンエナジー、2017年に東燃ゼネラル石油と合併を繰り返しましたが、実質的には経営が立ち行かなくなった各社を吸収した、旧日石主導の業界再編でした。そのため、昨年まで主要ポストを旧日石の出身者が占めていました。
旧日石には、「黒バット」というエリートコースを表す隠語があります。「黒」は産業エネルギー販売部門、「バット」は勤労部長が野球部部長を兼任する伝統から勤労部門を指しています。合併後も、杉森務氏や斉藤猛氏を含めて「黒バット」関係者が主要ポストを多く占めていました。
しかし、宮田知秀氏は旧東燃ゼネラル、山口敦治氏は旧三菱石油の出身で、「非日石」です。ともに製油所での経験が豊富な「製造系」です。
エネオスは、国内の石油需要の減少を受けて、(1)過剰になった製油所の閉鎖・再編、(2)特約店との関係見直し、(3)石油以外の新エネルギーの育成、といった課題に直面しています。
このうち、(1)と(2)については、過去のしがらみがある旧日石の「黒バット」よりも、「非日石」「製造系」の宮田氏と山口氏の方が適任。新経営陣には、思い切った改革が期待されます。
「燃えない組織」からの脱却が急務
と同時に、一OBとして新経営陣に期待したいのは、「燃えない組織」からの脱却です。
販売数量が年々減少し、新エネルギーの育成はなかなか進まず、経営トップはセクハラ行為を連発……というと、「うちの会社は大丈夫か?」と不安になるのが普通の感覚でしょう。
ところが、複数のエネオス社員に聞いてみたところ、そういった不安感や危機感は見えませんでした。今回のセクハラ事件についても、「他人事」「大したことない」という感想でした。
「経営トップは滅多に顔を合わさない雲の上の人なので、特に感想はありません。社員の間でも、あまり話題になりません。うちの妻の母親が『エネオスは大丈夫なの?』って妻に聞いてきたみたいです。こんなことくらいで会社が倒産するはずないのに、世間の人から見ると心配なんですかね」(30代)