「新しいチャレンジだったので、初めてのことが多かったです。ステージを作る難しさに付随する大変なところがたくさんありましたが、スタッフの皆が頑張ってくれました。これまでの朝ドラでは月曜日にまとめて1週間分のリハーサルをするのが慣例でしたが、『ブギウギ』ではそこにとらわれず、なるべく効率的な撮影を目指しました。ステージのリハーサルは念入りにやるのですが、日常のシーンはなるべくリハーサルの量を減らし、撮影しながら同時進行でリハーサルして撮っていくという方法をとりました。
とにかくスケジュール調整が難しかったです。撮影の合間を縫って、趣里さんには新曲の歌と踊りをレッスンしていただかなければならないですし、ステージシーンの撮影もある。ステージシーンと日常シーンが切り替わる際には、前後で着替えとメイクに1時間以上かかります。そのうえで、キャストの皆さんの休養も十分に考慮しなければなりません」
子役・小野美音の演技が光った
子役の小野美音が、6歳という実年齢でありながらスズ子の娘・愛子の2歳から4歳までを見事に演じ分けたことも話題になった。これも撮影の効率化をねらってのことだったのだろうか。
「そうですね。私の経験からすると、2歳児の役を2歳の子役さんに演じていただくと、これはもう奇跡を願うようなことで。ご本人のコンディションもありますし、初めての場所に来て、大人がいっぱいいて……という中でベストな演技をしていただくのは難しいと思いました。ですので、そこはもう割り切って。小野さん、素晴らしかったですよね。泣きの演技も笑顔の演技も、本当に良かったと思います。
演出がインフルエンザになって現場を休んだ日がありました。でも撮影を止めるわけにはいかないので、代わりに私が撮った愛子のシーンがあるのですが、場面の意味を詳しく説明しなくても、小野さんはちゃんと台本を読み込んで理解して、しっかりとお芝居を準備してきてくれていたので、大変驚きました」
チーフプロデューサーがディレクターの代理まで行うとは驚きだ。過密スケジュールの中、不屈の精神で撮影を続けてきたことがうかがえる。ちなみに福岡氏は過去に、『カーネーション』(2011年後期)、『純と愛』(2012年後期)、『ごちそうさん』(2013年後期)などの朝ドラに演出として携わっている。
「私が代理で演出したのはわずか4、5シーンですが、伝蔵(坂田聡)のおでん屋のシーンなども演出できて楽しかったです。助監督もやりましたし、何かあればなんでもやります」
脚本は「2人体制」で制作
このように、通常の朝ドラに輪をかけてマルチタスクが要求された『ブギウギ』だが、クランクアップは2月10日(最終回放送日の48日前)と、朝ドラの中ではかなり優秀と言える撮影スケジュールだった。脚本を足立紳氏と櫻井剛氏の2人体制で制作したことも影響しているのだろうか。『ブギウギ』は全26週中、17週を足立氏が、9週を櫻井氏が担当している。