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映画を通して日本人の親切さと丁寧さに改めて気づく

──なぜ、そう思ったのでしょうか。

レジャバ大使 日本の文化を理解する上で、すごく参考になったからです。私たち外国人からみると、日本人はすごく丁寧に見えます。礼儀正しく奥ゆかしいのは日本人の国民性だと思っていたのですが、『東京物語』のなかで、田舎から上京する義父母を迎える次男の嫁がかなり頑張っておもてなしをしている姿を見て、「あたりまえだと思っていた日本人の親切さや丁寧さは、自然にできているのではない。意識してできているものなのだ」とあらためて気がつきました。

 私は人生の大半を日本で暮らしていますが、ジョージア人なので、当然ながら生活様式は小津安二郎監督が描くような日本の暮らしではありません。親戚にも日本人はいないので、「日本の人は昔、こんな暮らしをしていたのだな」と知るいい機会にもなりました。

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自国の文字、おもてなし文化…共通点の多い日本とジョージア

──大使は日本を「ジョージアと似ている」とおっしゃっています。どんなところが似ていると思われますか?

レジャバ大使 どちらも自国の文字を持ち、文化や伝統を大切にする国であるところですね。また、日本には「おもてなし」の文化がありますが、ジョージアで数千年続いているスプラという宴会の作法は、まさに日本のおもてなし精神そのものです。

ジョージア国旗を手に。Xでは駐日大使としての活動のほか、来日した「親戚の少年」とのやりとりなども注目を集める。今年の東京マラソンも走りながら投稿し、4時間5分1秒で完走した ©深野未季/文藝春秋

 自分たちの文化を守ることに固執せず、相手のいいところを受け入れる。そうやって独自の文化を発展させてきた両国には、共通する精神や価値観があると思います。

──では、日本人がジョージア映画をより多く観るようになれば、日本人のジョージアに対する理解も深まりそうですね。

レジャバ大使 そうですね。それと、ジョージア映画ではほとんどすべての作品にワインが登場するシーンがあります。8000年もの歴史を持つジョージアワインは、ジョージアの人々にとって生活の一部であり、ワインなくしてジョージアは語れません。今年は8月に「ジョージア映画祭」を開催すると、ジョージア映画祭の立役者、はらだたけひでさんがおっしゃっていますので、ぜひ足を運んでいただき、映画に登場するワインにも注目していただけたらと思います。

ティムラズ・レジャバ 1988年ジョージア・トビリシ生まれ。92年に初来日し、ジョージア、日本、アメリカ、カナダで教育を受けたのち、2011 年早稲田大学卒業。キッコーマン勤務などを経て18 年ジョージア外務省入省。21年より在日ジョージア大使館特命全権大使。近著に『ジョージア大使のつぶや記』(教育評論社)。Xアカウント@TeimurazLezhava