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毒両親

 DV(ドメスティック・バイオレンス)とは、配偶者、恋人などの親密な関係にある(もしくは親密な関係であった)パートナーから繰り返される暴力のことだ。一方モラルハラスメントは、精神的暴力が主な手段となっているDVを指す。

 中村家では、父親から母親への身体的暴力だけでなく、精神的暴力も日常的に行われていた。そしてあろうことか、父親から中村さんへ、母親から中村さんへの暴力も頻繁に行われていたのだ。

 例えば5~6歳の頃、中村さんは父親からグローブとボール(硬球)を買ってもらった。父親は「キャッチボールをやろう」と言う。

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 しかしまだ幼い中村さんは、父親が投げるボールが捕れない。すると捕れない度に酷く罵られ、顔や体にボールを当てられる。痛さのあまり泣き出すと、「こんなボール痛くないだろ!」と痛みさえ否定される。中村さんは父親とのキャッチボールを、「デッドキャッチボール」と呼んだ。

写真はイメージ ©️AFLO

 また、家での食事の時間は、中村さんにとって嫌な時間だった。食事中は、両親から責められたり怒られたりした記憶ばかりがあるからだ。中村さんにとっては、食事の時間にテレビが付いていたことが唯一の救いだった。テレビに集中していれば両親と会話せずに済む。

 ところが、中村さんがテレビに集中しているのが面白くなかったのか、母親は突然中村さんの後ろから手で目隠しをし、「今日の献立を全部言え」と迫ってくることが度々あり、間違えば責められたり、酷い時は殴られた。泣き出せば母親から、「お前は男の癖によく泣くから、将来は女優になれるな!」と嘲笑。

 またある時は、父親から「食事中にテレビの方を向くな」と言われた。座る位置のせいで、首を90度近く曲げないとテレビが見えなかったため、その姿勢が気に入らなかったようだ。父親は、テレビの真正面に座っている。思わず「お父さんは首を曲げなくてもいいからずるい」と口にすると、父親は突然激昂。食事中の中村さんの首を掴んで吊り上げ、何度も殴られた。

「こんなことがしょっちゅうあったもんですから、食事というもの自体が嫌いになりました。食事にトラウマがあると、当然食事の量も少なくなり、私はずっとやせっぽちでした。親からは事あるごとに『男の癖に痩せすぎ、肩がない』とか『情けない身体』などと言われたものです」

 服装についても、自分で選んだ服の組み合わせに、「センスがない」と一蹴され、「お前は笑顔が不気味だ」などと言われて深く傷ついた。

 それでも小学校高学年になると、少しずつ身体が大きくなり、体力もつく。母親に殴られるときに避けたり、あまり泣かないようになっていく。ある日、母親から殴られ、気丈に睨み返したところ、母親は半笑いを浮かべた直後に拳を握ってボクサーのような構えを取り、「やるのか? おら。まだ負けんぞ?」と言い放った。

「それを見たとき、私は酷く怯えてしまいましたが、同時に、『もう少し大きくなって母より力もついたら、絶対に仕返ししてやろう』と心に決めました」