児童虐待、DV、ハラスメントなどが起こる背景には、加害者の過去の「トラウマ」が影響しているのではないか――。そう語るのはノンフィクションライターの旦木瑞穂さんだ。
2023年12月に刊行した『毒母は連鎖する~子どもを「所有物扱い」する母親たち~』(光文社新書)などで、家庭内で起こる“タブー”を調べていくうちに、親から負の影響を受けて育ち、自らも「毒親」となってしまう「トラウマの連鎖」こそが、現代を生きる人々の「生きづらさ」の大きな要因のひとつではないかと考えたという。
今回は、自身の“モラハラ加害者”の過去に向き合いながらカウンセラーとして活動する中村カズノリさん(44)に、「トラウマの連鎖」を断ち切るための日々を尋ねた。(全3回の2回目/最初から読む)
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毒父への反撃
中学1年になった中村さんは、一時期学校に行きたくない時期があった。抑圧的な校風や威圧的に声を荒げる教師に接して、嫌な思いをしたのがきっかけだった。
それを父親に言うと、「学校に行かないなら、家から出て行け!」と言い、部屋から玄関まで引っ張り出された。中村さんはしばらく考え込んだ後、「もうこんな家にも居たくない」と思ってドアノブに手をかけようとした。すると次の瞬間、反対の手を引っ張られて上がり框に倒れこむ。
「この豚! 誰が面倒見てやってると思ってるんだ! 豚が!」という言葉と共に、父親の拳が何度も何度も中村さんに振り上げられた。
「自分の気持ちをわかってもらえなかった悔しさや、出て行けと言われた怒りやら何やらに苛まれ、『出て行けと言われたし、出ていこう』と思ったら酷い目に遭わされ、『一体どうすればいいんだ』と殴られながら考えていました」
中学2年になったある日、父親はいつもに増して機嫌が悪く、やたらと中村さんに突っかかってきた。負けじと言葉で言い返すと、「親に逆らう気か? 最近はそういうのが流行ってるのか? 馬鹿にしやがって!」と言って掴みかかられ、一方的に罵られる。「やってられない」と思った中村さんは、初めて父親に殴りかかった。それを受けた父親はさらに激昂。中村さんは顔が腫れ上がるまで殴られ、頭を踏みつけられ、喉を蹴られ、ぼろぼろになったところで母親が仲裁に入った。
母親は「お父さんに謝るように」と強く言ったが、中村さんは納得がいかない。しかし何度も強く言われたため、中村さんは父親に謝った。