ベンチャー界の“希望の星”
このような状況を受けて、日本でも、AI専用の半導体開発が加速している。
その最たる例が、AIベンチャーの「プリファード・ネットワークス(PFN)」(東京・千代田区)だ。同社は早くからIoT(モノのインターネット化)とAIの融合に着目してきた。このベンチャーは、AIやロボットが莫大なデータを処理する際にクラウドを介さず、各端末(エッジ)が横の連携を取り、分散協調的に処理し、ネットワークへの負担を減らす「エッジヘビーコンピューティング」の技術を提唱したことで一躍名を上げた。
また、AIに膨大なデータを処理させる「深層学習」のフレームワーク「Chainer」を開発し、トヨタ自動車やファナック、国立がん研究センターなどと協業してきた実績もある。創業5年にして、当時、国内唯一の「ユニコーン」(企業価値が10億ドルを超える未上場企業)となり、総資産は200億円を超え、今や日本ベンチャー界の“希望の星”とも言われている。
PFN社は、2016年にAI半導体「MN-Core」の開発にも成功し、同社のオリジナルスパコンには、この半導体が搭載されている。翌17年には、トヨタ自動車から105億円の資金提供を受け、自動車分野におけるAI技術の共同開発を急ピッチで進めている。
PFN社の生成AIの基礎開発を日本政府は積極的に支援している。それは経済的支援にとどまらない。国内最大の演算規模を持つ産業技術総合研究所のスパコン「ABCI」の計算能力のうち2割を同社が優先的に利用できるようにしている。
PFN社の急成長の背景には、AI半導体の特需、それに応じて加速する研究開発、それを支援する政府という黄金の三角形が見て取れる。
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本記事の全文は、「文藝春秋 電子版」に掲載されています(泉谷渉「半導体列島が補助金ラッシュに沸いている」)。