不審火で全焼…さらなる試練
――ギリギリで耐えていたところに、あろうことか唯一稼働していた本店が不審火によって全焼してしまいます。
信子 もう終わりや思いました。なんとか銀行からの融資にこぎつけたのに、最後の望みである本店が全焼してしまった。建物のオーナーは私たちではなかったから、火災保険による見舞金を受け取ることもできなくて。残ったのは、莫大な借金だけ。家族からも、「あんたはもう終わったな」って言われた。警察に呼び出されて、毎日泣くことしかできない。でも、幸治君は毎日泣いても仕方がないって言う。気分転換で喫茶店にお茶でも飲みに行こう言うて。
――その行動が、後にマダムシンコを生むわけですね。
信子 その時入った喫茶店は、ケーキ食べて、コーヒー飲んで2000円くらい。落ち着いたいい空気が流れていてね。一方、私たちがやっていた焼き肉店は1980円で食べ放題。私も幸治君も体と心がボロンボロンになるまで頑張ったけど、結局残ったのは借金だけ。その時、目が覚めたんですよ。幸いにも銀行から借りたお金が少しだけあったので、それを元手にこんな喫茶店をやりたいと思って。すぐにフランチャイズできますかって訊いたら、6000万円かかるって。ああ、あかんわって、もう夢がなくなって。
ところがその喫茶店にあった雑誌をパラパラとめくっていたら、和風喫茶店のフランチャイズ募集の広告が載っていて、200万円から始められる、と。「これや!」と思って、もうパッと元気になって。夜遅かったんで、「早く朝来い、早く朝来い」と思いました。お日様のぼって、化粧ばっちり決めて、ブォーッて車を飛ばして、ブンブンブンブントンネル越えて、広告主のいる姫路まで行きましたよ(笑)。それで、「甘味茶寮川村」をオープンしたんです。
――焼肉店が全焼してからどれくらいでオープンしたんですか?
信子 5か月後やったと思います。
「マダム」になった理由
――全焼から5か月で喫茶店をオープン……行動力がすごすぎます。
信子 やるいうたらやるしかないんですよ。絶対に這い上がってやるって決めていたし。「甘味茶寮川村」をオープン後、幸治君がパティシエを連れてきて、あらたに始めたのが箕面市にある現在のマダムシンコ本店。