映像作品のキスやセックスなど性的シーンの撮影に、「インティマシー・コーディネーター」が加わることが増えている。今や、アメリカの映像業界では当たり前に存在する職業だが、日本でこの肩書きを持つのはわずか2人。それだけに、彼らの役割や必要性について、まだまだ理解されていない部分も多い。そもそもインティマシー・シーンとは? 現場ではどんな仕事をしているのか? 日本初のインティマシー・コーディネーター、浅田智穂さんに聞いた。(全2回の1回目/続きを読む

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俳優が「NO」と言う演出は行わない、が基本

――最初に、インティマシー・コーディネーター(以下IC)とはどんな役目を担う仕事なのかを教えてください。

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浅田 まず、インティマシー・シーンとは何かから説明すると、ヌードや疑似性行為の描写は勿論、それらを想起させるシーン、キスや性的な身体的接触のあるシーンなどを指します。私たちはインティマシー(親密な)・シーンを撮影するにあたり、俳優の身体的・精神的な安心安全を守りながら、監督の求める演出や表現を最大限できるようサポートする仕事です。

日本初のインティマシー・コーディネーター浅田智穂さん ©鈴木七絵/文藝春秋

――俳優の安心安全を守る、とは具体的にはどのように?

浅田 色々とありますが、まず、ICが入る現場では、すべてのインティマシー・シーンにおいて、事前に俳優側の同意を得て撮影に臨むことが前提にあります。つまり、俳優たちは撮影当日、突然、同意していない演出を強要されることがない、ということ。そのために、俳優と監督の間に立ち、様々な調整を行います。また、ヌードや疑似性行為がある場合、内容の同意書の作成もサポートします。文書に残すことで俳優は安心して撮影に入れるので、とても大切なんです。