文春オンライン

ヌード、セックスシーン…「『説得してくれる人だと思った』と言われることも」現場での“強要”から俳優を守る〈インティマシー・コーディネーター〉の本当の仕事

インティマシー・コーディネーター浅田智穂さんインタビュー #1

2024/03/31

source : 週刊文春CINEMA オンライン オリジナル

genre : エンタメ, 映画

note

――ヌードになる当人だけでなく、すべての方に確認するんですか!?

浅田 ええ。「正面は避けたい」という方がいれば席の位置を配慮します。撮影当日に「こんな真正面で性器が見えると思っていなかった」と言われたり、ショックを受ける可能性もあるので、やはり事前の確認が大事なんです。

「ヌード」の定義とは?

――よく考えると、気まずかったり、嫌悪感を抱いたりと、精神的にダメージを受ける方はいますよね。「ヌード」とはどの状態を指すのでしょうか?

ADVERTISEMENT

浅田 水着で隠れる部分を露出したら「ヌード」です。

――というと、女性であればビキニで隠れる部分が見えてなければ大丈夫?

浅田 基本はそうです。例えば女性のシャワー・シーンで背中だけ見せたとします。でもビキニトップのように背中で結ぶひもがなければ、たとえ胸が見えていなくても「ヌード」になります。ただ、「ヌード」ではなくても露出が多ければインティマシー・シーンとする場合が多いです。 

 たとえば、女性のシャワー・シーンではよく、チューブトップ(※肩ひものないチューブ状のトップスのこと)を身に着けて撮影するので、「ヌード」にはあたりません。ただ実際にはインティマシー・シーンになることがほとんどです。というのも、どちらにしても肌の露出が多く、濡れたチューブトップが肌に密着し体の形状が露わになるからです。

アメリカの大学を卒業後、東京国際映画祭や日米合作映画の現場での通訳を経て、インティマシー・コーディネーターに ©鈴木七絵/文藝春秋

――ちなみに、キスはどうでしょう?

浅田 キスに限らず、抱きしめる、手をつなぐという場面も、キャラクターの性別には関係なくすべて確認事項としてピックアップします。というのも、どの接触がその俳優にとって心地悪さや嫌悪感、あるいは恐怖心を抱くのかは他人にはわからないからです。

 特にラブストーリーは、人間同士の距離を縮めていく過程を描く際、最初は手を繋ぎ、次にハグ、と接触が増えていくことがあります。なので、1つ1つ、すべて確認し、クリアにしてから臨みましょう、というスタンスで臨んでいます。