――調整するとはつまり、監督と俳優の話し合いの場を設けたり、演出のアドバイスをしたりするということですか?
浅田 インティマシー・シーンに関してはICが俳優に話します。監督が俳優に直接話すと権力勾配によるプレッシャーで俳優は「NO」と言いづらくなってしまうからです。インティマシー・シーンでは、俳優が「NO」と言う演出は行わない、ということが基本なんです。また、俳優が「OK」という範囲でどのような描写にするかは、監督がすべて考えることもあれば、私からアドバイスや振り付けをすることもあります。
――なるほど。「NO」は「NO」であり、「OK」にするために動くわけではないんですね。
浅田 現場スタッフの方にも「浅田さんは、(監督の希望どおりの演出が出来るよう)俳優さんを説得してくれる人だと思った」と言われることもあります。わかりにくいですよね。
プロセスを追って説明すると、まず仕事を受注したら台本を読み込み、インティマシー・シーンやそれに該当する可能性があるところを抜粋。監督に1つ1つ、ディテールに至るまで演出について伺います。そして、それらを俳優に説明し、「出来るか、出来ないか」を確認します。
もしも「出来ない」という場合、俳優の「ここまでなら出来る」という意見を監督に戻したり、例えば衣装や撮影の環境で俳優の不安が解決できるならば、それらを俳優に提案したりしながら、最終的に双方が納得できる描写に落とし込みます。
デッサンする側にも「モデルがヌードになりますが大丈夫ですか?」
――IC的には、何を基準に「インティマシー・シーンか否か?」を判断するのでしょうか?
浅田 明確な基準でいうと、まずセックスや自慰行為など性行為の表現は完全にインティマシーです。そして、「ヌード」。例えば美術の教室でヌードモデルを囲んでデッサンするシーンなども該当しますね。この場合、デッサンをする側の俳優たち一人ひとりにも「ヌードモデルが本当にヌードになりますが大丈夫ですか?」と確認します。