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ハブ毒も唾液腺が進化した消化酵素だ。だから、ハブ毒を飲み込んでも喉元に刺激を感じるだけで人体に変化は起きないのではないか、と推論を立てられる。
ハブ捕り名人が胃痛になったワケ
ハブ毒は飲んでも大丈夫だし、皮膚に付いても何も起きないけれども、眼球のように皮膚の下に形成された組織に毒が入ると、つまり目に入ると咬まれた時と同じ症状が起きる。このことも仮説を裏付ける。
とはいえ、人間でも自分の胃の粘膜を自分の胃液が消化してしまってバランスが崩れる場合がある。みなさんもご存じの胃潰瘍だ。南さんがハブ毒を飲んで、胃が痛くなったのも、おそらく胃が炎症を起こしていたのだろう。
南さんは大酒飲みだった。酒が大好きで、飲んでいる人数が多くても私と二人でも、つまり誰とであろうと、焼酎の一升瓶が空になるまで眠らない人だった。ハブ毒をガブ飲みしたことで飲み過ぎによる胃の不調がわかったというわけだ。
服部 正策(はっとり・しょうさく)
農学博士
島根県生まれ。東京大学農学部畜産獣医学科卒業。東京大学医科学研究所の奄美病害動物研究施設に2020年3月まで約40年間勤務。専門は実験動物学、医動物学。ハブの生態、咬傷予防、ハブ毒インヒビターの研究や、ワタセジネズミ、トゲネズミなど野生哺乳類の研究、実験用霊長類を使用した感染防御実験などを行ってきた。休日や夜間の野生動植物の観察がライフワークで2024年3月現在も続けている。著書に『マングースとハルジオン』(伊藤一幸との共著、岩波書店、2000年)がある。退官後は、島根県の山間部で農業をしながら、奄美の自然を伝える活動や著述に勤しんでいる。
農学博士
島根県生まれ。東京大学農学部畜産獣医学科卒業。東京大学医科学研究所の奄美病害動物研究施設に2020年3月まで約40年間勤務。専門は実験動物学、医動物学。ハブの生態、咬傷予防、ハブ毒インヒビターの研究や、ワタセジネズミ、トゲネズミなど野生哺乳類の研究、実験用霊長類を使用した感染防御実験などを行ってきた。休日や夜間の野生動植物の観察がライフワークで2024年3月現在も続けている。著書に『マングースとハルジオン』(伊藤一幸との共著、岩波書店、2000年)がある。退官後は、島根県の山間部で農業をしながら、奄美の自然を伝える活動や著述に勤しんでいる。