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2018/04/12

安倍さんは経産省にだまされちゃったね

元東大生G 今の安倍晋三さんは、世間では小泉さんが後継者として育てた総理ということになっています。小泉さんが総理在任中、安倍さんを官房副長官、党幹事長、党幹事長代理、官房長官と、いろんな要職につけられた。当時、どのようにお考えになって安倍さんを重用されたのかということをお伺いしたいと思います。

幹事長として総選挙を仕切った安倍氏 ©文藝春秋

小泉 まず、自民党はそれまでは「派閥順送り人事」が当たり前だったんです。当選回数に応じて、各派閥の推薦で人事が決まる。こういうのを壊さなきゃいかんということで、若い安倍さんを重用した。

 安倍さんは森政権の官房副長官をやっていたでしょう。私と安倍晋三さんのお父さんの晋太郎さんは、同じ派閥で親しかった。安倍さんはお父さんの秘書をしていたから、昔から付き合いもあった。

 その安倍さんが森総理の間、官房副長官として内閣の勉強をしているわけだから、私が総理になった時にはそのまま続投させた。やっぱり、旧来の自民党とは違う、野党とも違うという印象を与えるために、安倍さんというのは絶好の人物だったから。ということで、その後も、官房長官、幹事長として使った。

 ところが、今じゃ、原発の考えは俺と違うんだよ。安倍さんは経産省の考えに毒されていると思うんだけどね。これはわからないね。安倍さんに会うたび、「経産省にだまされるなよ」と言っているんだけど、今、だまされちゃったね。残念なんだけどね。

憲法9条を普通の感覚で読めば、自衛隊は憲法違反

元東大生G もう一つ、質問したいことがあります。安倍政権の憲法に対する考え方についてはさまざま議論があるところですが、そういった現政権の姿勢についてどのようにお考えでしょうか。

小泉 日本国憲法9条は、おかしいですよ。

 2項(前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない)では、「自衛隊は戦力じゃない」と言っているんだから。戦力のない国がどうして国民を守れるの。変えなきゃいかん。海外で武力行使しないというのはいい。しかし、自衛隊に戦力がなかったら持っている価値ないじゃないか。戦力がなきゃ、侵略された場合、防衛できませんよ。

 9条を普通の感覚で読めば、自衛隊は憲法違反ですよ。しかし、今の条文で自衛隊は合憲だと解釈しちゃうんだから、今、日本人というのはいかにもあいまいなことが好きだね。融通無碍、現実に合わせる。

 おかしいんだけども、なんで9条そのものを守ろうとする人が多いのかというのは、あの無謀な戦争に影響がある。第2次世界大戦。今、考えてみれば、アメリカと戦って、勝てるわけがないでしょう。なのに、戦争に突入しちゃった。300万人以上の国民を亡くしてしまった。その後遺症があるんですよ。軍隊忌避、軍隊アレルギーで、この9条ができた。

現実を直視しろということ

 しかし、実際はアメリカの武力があるから今、日本は守られているわけ。将来的に自衛隊は戦力があると認めるのは当たり前の考えだと思うんですよ。

 ただし、それをやるには手順がある。9条の改正を与野党とも選挙の争点にしちゃいかんというのは、私の考え方。野党第1党と合意ができるような改正をするべき。3分の2以上の国会議員が「これは妥当だ」、国民の大半も「そうだな」と思えるような状態で改正をすべきです。そのためにはまだ時間が必要かな。そういう考えを持っている。

©常井健一

元東大生G 閣議決定で9条の解釈を変えるとか、改憲の発議を強行するとか、そういったことについては懸念を持たれているということですか。

小泉 いずれも必要ないと思っています。いざ危機が起こった時、「この9条じゃまずいな」ということが誰にでもわかる。そうなるまで、時間が必要だな。

蒲島 極めて常識の政治ですね。

小泉 現実を直視しろということ。誰が自衛隊は戦力を持たないと思っているか。憲法9条改正というのはいつの日か、自然に盛り上がって、妥当な線に落ち着く。

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