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今の日本では彼女の主張がどう響くか…

 もっとも、田代まさしやピエール瀧が人非人の如く断罪され、全てが「自己責任」と片付けられるような今の日本では、きっかけは千差万別にせよ「薬物中毒は恥ではない」というナンの主張がどう響くか、心許ない。彼女の勝利は一服の清涼剤だが、同時に我々の喉に苦味も残す。

 

INTRODUCTION
全米で50万人が命を落とした「オピオイド危機」を背景に、薬害を招いた鎮痛剤「オキシコンチン」を過剰に販売促進したパーデュー社とその所有者たるサックラー家と戦う薬害抗議団体「P.A.I.N.」の活動を追うドキュメント。主人公は写真家のナン・ゴールディンで、アート界における自身の地位を生かした活動を展開する。劇中ではナンの代表的な作品である「The Ballad of Sexual Dependency(性的依存のバラード)」なども効果的に引用される。監督はドキュメンタリー映画作家ローラ・ポイトラス。

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STORY
1970年代から80年代にかけ、当時過激と言われたアンダーグラウンドカルチャーを撮影した作品が評価され、ナン・ゴールディンは一躍時代の寵児となった。そのナンが2018年のある日、自身の作品が展示されているメトロポリタン美術館で抗議活動を行う。鎮痛剤「オキシコンチン」の容器を一斉に放り投げ、「サックラー家は人殺しの一族だ!」と声を上げながら…。ナンが巨大資本を相手に声を上げ、戦うことを決意したのはなぜか。ナンの知られざる壮絶な半生を振り返りながら、その理由を解き明かす。

STAFF & CAST
監督・製作:ローラ・ポイトラス/出演・写真&スライドショー・製作:ナン・ゴールディン/2022年/アメリカ/121分/配給:クロックワークス/3月29日公開