高校野球の競技人口の減少が止まらない。日本高野連の発表によると、2014年には1~3学年合わせて17万312人いた高校野球部員数は、2023年には12万8357人にまで減った。率にして25%近い減少だ。これは「少子化」だけでは説明がつかない。

 減少の背景にはいろいろな事情がある。プロ野球の地上波放送がほぼなくなって、子どもがテレビで野球を観る機会が激減したこと。ボール遊び禁止の公園が増えて「野球ごっこ」ができなくなったこと、さらにはサッカーやバスケットボールなど他の競技をやる子供が増えたこと。そして野球は他の球技よりも親の負担が大きいことも原因とされる。

 意外に大きかったのが「高校野球独特の外見やふるまいが嫌だ」と言う声だ。上下関係がうるさくて、今風の言葉で言えば「オラオラ」っぽくて、何か怖そうで。そしてその象徴としての「坊主頭」が嫌、と言う声も多い。

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開会式で準優勝旗を返還した前年準優勝・報徳学園の間木歩主将 ©時事通信社

 筆者は高校野球の取材に行くが、高校に着いてグラウンドの端っこを歩いていると、目ざとく見つけた野球部員が帽子をとる。坊主頭が上目遣いに筆者を見ながら大声で「おおーっす!」と挨拶をするのだ。いつ来てもドキドキして、なかなか慣れない。

 高校野球の部員たちは「野球関係の人」だけに挨拶をするようで、高校の廊下で担任の先生と立ち話をしていても、先生の後ろを先輩部員が通ると、話をやめて、先生の肩越しに「おおーっす!」と言ったりする。

「一番教えにくいのは?」「そりゃ、なんたって高校野球の選手だよ」

 筆者は野球以外の取材も良くするが、あるとき自動車教習所の取材をしていて教官に「一番教えにくいのはどういう人ですか?」と聞いて「そりゃ、なんたって高校野球の選手だよ」と言われたことがある。

 3年の夏を過ぎると引退した野球部員が免許を取りにやって来る。

「彼らはこっちが言うことには、何でもでっかい声で『はい!』って返事をするんだ。でも、あとで聞いたらなーんにも頭に入ってないんだ。ただでかい声で返事してるだけなんだね。坊主頭が教習車に乗って来ると、あーっまたかって、嫌になるんだよ」

 ショッキングな話だ。「坊主頭」は、「なんでも上の言うことに、はいはい言うだけ」の高校球児の体質を象徴しているようだ。

 しかし、最近の高校野球は、どんどん変わってきている。「1週間で500球」とはいえ「球数制限」が導入されたし、長時間の練習や、パワハラめいた指導も減っている。

 そして「坊主頭」も。

 日本高野連と朝日新聞社は、5年に一度「高校野球選手の頭髪」についてのアンケートを実施している。