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「部員の頭髪は丸刈りと決めている」と答えた学校は、2013年には79.4%、2018年には76.8%だったが、2023年には26.4%と激減している。

 この間に何があったのか?

「やっぱりコロナ禍が大きいでしょうね」とある公立高校の指導者は言う。

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「コロナ禍で、野球部の活動そのものが停止になった。部員たちも家にいたり、リモートで授業を受けたりして、グラウンドに出ることがほとんどできなくなった。だから坊主頭にする必要もない。それがいつの間にか定着して、コロナ明けになってグラウンドに出てきても『頭髪自由』が増えたんじゃないかな」

 この説が有力だろう。

 もう1つは昨夏の慶応義塾高校の大活躍だろう。髪の毛をなびかせた慶応の選手が甲子園で楽しそうに野球をするのを見て「格好いい」と思う人が増えて「高校野球も長髪」と言うトレンドが拡がったのではないか。

昨年夏の甲子園で優勝した慶応高は思い思いの髪型で出場した ©時事通信社

 ただし、慶応高校はずっと前から「髪型自由」だ。筆者は森林貴彦監督や、上田誠前監督にこのことについて聞いたことがあるが、口をそろえて「あれは、ずっと前からそうなんで、うちにとっては何でもないことなんですよ」と言った。

 慶応高校野球部と言えば「自分で考え、自分で練習する」習慣が定着しているが、それも「髪型自由」と同じく、慶応の伝統になっているのだ。

 昨年春に東北高校を取材した。この学校も「髪型自由」になっていて大半が長髪だが、選手たちが年齢よりも大人びて感じられた。長髪の大学野球の選手を見慣れているから、そう思ったのかもしれない。東北の佐藤洋監督も選手の自主性を大事にする指導者だ。

センバツで「丸刈り以外」の学校は4つだけ

 しかしながら、甲子園に出てくる強豪校ではまだまだ「坊主頭」が主流だ。

 昨年夏の甲子園で言えば「全員が丸刈りなわけではない」高校は、49校中、慶應(神奈川)、花巻東(岩手)、土浦日大(茨城)、クラーク国際(北北海道)、浜松開誠館(静岡)、立命館宇治(京都)、英明(香川)の7校にとどまった。

 また今年の春の甲子園でも青森山田(青森)、学法石川(福島)、中央学院(千葉)の3校と、丸刈りと長髪が混在する耐久(和歌山)の4校が「全員が丸刈りなわけではない」ようだった。

 

 微妙な言い方なのは「野球部員は全員丸刈り」というルールを設けている学校はかなり減っていて「髪型は自由」としながらも「丸刈りが望ましい」ということで、結果的に全員丸刈りの学校というケースが多いからだ。