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 ラジオを作っていく中で、彼のモノマネをする能力、特に格好いい人の格好よさをモノマネする能力の高さに痺れ、キャラクターを作ってコントのような企画も考えた。

 彼らのファンだけではなく、自分らと同世代の男が聞いても、共感したり笑ったり出来る内容にしたいと思って、全力で向き合った。

 普通のマネージャーなら、僕のそういう番組構成に対して絶対怒るところだが、イイジマサンは僕のやることをおもしろがってくれた。

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 一度だけ、彼らの発売した新曲に引っかけて、ド下ネタの企画を作り、放送したことがあった。イイジマサンは、僕に電話してきて、めちゃくちゃ怒った。めちゃくちゃキレた。

 キレる中で「おもしろいのは分かるよ! でも、さすがにあれはダメ」と言った。

 怒られる中でも「おもしろい」と認めてくれていることが嬉しかった。

 イイジマサンは、弱冠22歳の小僧をおもしろがってくれたし、僕はこの人に認められたいと、もっと頑張れるようになった。

『もう明日が待っている』(鈴木おさむ著、文藝春秋)

逃げずに、歌った6人

 1995年1月17日。

 阪神・淡路大震災が起きた。

 1月19日。

 ラジオの収録にイイジマサンが来て、ラジオ終わりで、タクヤと2人で何か話していた。その様子から、とても大切なことを話している空気が伝わった。

 翌日、金曜20時の人気音楽番組に彼ら6人は出演する予定で、そこで歌う曲は、人生はなんとかなるから、たぶんオーライだよ! というメッセージを格好いいブラックミュージック的音楽に乗せた新曲になるはずだった。

 イイジマサンは僕に、翌日の音楽番組で歌うのをその新曲ではない曲にしたことを教えてくれた。

 それを聞いて。見なきゃいけない。見届けなきゃいけないという気になった。

 1月20日。

 20時に番組が始まると、彼ら6人が出てきた。

 黒いスーツに身を包んで、阪神・淡路大震災の被災者に向けた言葉を伝えた。

 彼らは歌った。当初歌う予定だった新曲ではなく。

 どんな時もくじけずにがんばりましょうと。

 本気で本音で伝えようと歌い踊る6人。

 アイドルだったら、こういう事態には、生放送でコメントすることすら避けたいところだ。

 小さなミスでアイドルとしての人生が終わるから。

 だが、彼らは、日本のピンチに向き合った。逃げずに、歌った。

 この番組での彼らの歌唱は、多くの人を勇気づけた。