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 当然、会見前に収録されたものだったが、放送が結婚会見直後だったため、視聴者もタクヤが結婚のことを赤裸々に話すのではないかと期待してしまった。

 世帯視聴率30%を超えたことがその期待値だろう。高倉健が出ても超えられなかった30%の壁を越えた。

 ただ、番組の中で結婚について話すことは全くない。会見後、タクヤやメンバーも、結婚のことをメディアで口にしなかった。

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 僕はそれでいいと思った。あんなに堂々と会見をしたんだから、それで決着しただろうと。

 だから、コンサートは東京ドームの公演を残してはいたが、そこでも、特に結婚のことは触れずにいくのだと思っていた。

©文藝春秋

タクヤの心の内

 僕はタクシーに乗り、急いで東京ドームに向かった。到着して会議室に入ると、リーダー、ゴロウチャン、ツヨシ、シンゴにタクヤ、そしてイイジマサンが会議をしていた。

 僕が会議室に入ると、イイジマサンとメンバーから一斉に「おせーよ」と言われるが、そもそもこんな会議をするなんて聞いてなかった。

 急遽始まったらしいその会議の空気が穏やかではないことに気づいた。

 会議の理由を聞くと、タクヤが、「自分が結婚することをファンの前でちゃんと伝えたい」と言い出したからだった。

 結局、さいたまスーパーアリーナの時にはなにも触れずにコンサートを行った。

 会見はしたが、ファンの前では直接報告してない。それがタクヤの中ではずっと引っかかっていた。

 そもそもだが、ファンの心理からしたら、自分が人生を賭けて応援しているアイドルが結婚すること自体、嬉しいか嬉しくないかの2択で聞かれたら嬉しくないはずだ。

 もちろんファンはその人が幸せになってくれることを望むが、それと同時に、幸せにしてくれることも望む。それがファンだ。

 しかもタクヤは28歳。

 アイドルとしても俳優としてもトップに立っている彼の結婚という決断は、予想に反するスピードだったはずだ。

 ファンからしたら、堂々とした会見を見たことで結婚をすることは分かったけれど、それを納得したかしてないかは別の話だ。

 タクヤは「この東京ドーム公演で、コンサートが始まる前に自分の口でファンに報告したい」と言ったが、当然、メンバーはそれをライブで報告することで、ファンを刺激してしまう可能性があることを考える。

 もしかしたらタクヤが自分の口でファンに改めて伝えることによって、その場で泣く人だって、怒って叫ぶ人だって、帰ってしまう人だっているかもしれない。

 タクヤもその可能性は十分理解していたが、それでも自らの口で報告するというのが自分なんじゃないかと思い、みんなに伝えていた。