膝痛も糖尿病も改善
巽 医学も同じです。今の医学は病気の裏にある原因を治しません。原因を治したら体は元に戻るのに、主に何をするかというと、対症療法って知っていますか?
大村 聞いたことはあります。
巽 明治の次の大正ちゃいまっせ(笑)。対症療法とは症状だけを治す療法のことで、整形外科医なら「膝が痛い」と言う人に痛み止めの湿布や薬を出します。それで痛みはすぐに取れるけど、原因を治していないから3日もすれば再発する。原因は何かといえば、最初の方で話した体型とか歩き方です。膝の軟骨が減って骨が割れるから痛むわけで、崑さんのように歩き方を変えて、体重を減らしたら治るんですよ。
大村 ああ、そうか。
巽 僕は2006年から膝関節を専門として診てきましたけど、膝の患者さんの3分の1は、食べ過ぎで体重が重くなり悪化しています。半数ほどは糖尿病を患っています。そこで僕は、彼らに週1日だけ絶食してもらったんです。
大村 先生も実践しているというさっきの方法やね。
巽 この方法で4分の1くらいは成功して体重が減ります。減った人は膝の痛みが良くなるだけでなく、糖尿病が治りました。
大村 糖尿病の薬を飲んで治らへんかった人でも?
巽 はい。薬二つくらい飲んでいるバリバリの糖尿病患者ですけど、絶食の日だけは薬もやめときなはれと言って。真面目に取り組む人は血糖値がどんどん下がって、3カ月後には糖尿病の基準値を下回ります。僕が鎌倉の病院にいた15年間で、175人の糖尿病を治しました。
大村 それはすごい!
巽 今、日本の成人の5〜6人に1人が糖尿病か予備軍と言われています。ほんの数%の人は先天性ですが、残りはみんな食べ過ぎです。
大村 大半の原因が食べ過ぎ。
巽 だから病院は「食べ過ぎをやめなさいよ」と指導するのが正しいはずなのに、血糖値を下げる薬を出すんです。でも血糖値を一気に下げると、脳下垂体がびっくりしてホルモンを出して「食え」と指令する。ホメオスタシス(恒常性)といって元に戻ろうとするわけです。だから薬を飲むと、患者さんは腹が減って食べてしまう。糖尿病の原因は食べ過ぎなのに。つまり、薬を飲むことでネガティブループに入るんです。今の短い説明で、崑さんもすぐ理解できたでしょう?
大村 そうですね。
巽 それを某有名病院の先生は、「この新薬は従来の薬の3倍も早く血糖値が下がるんですよ」と勧める。それで何が起こるかといえば、薬を飲み続ける限り、一生糖尿病が治らないわけですよ。
大村 怖い話やなぁ。
巽 それが今の医学、対症療法の現実です。
◆
本記事の全文は『文藝春秋 電子版』に掲載されています(大村崑×巽一郎「100年筋肉」を鍛えよう」)。
文藝春秋の執筆陣と交流するゼミ形式イベント「文藝春秋講座」に、巽一郎氏が登壇します。筋トレ指導を一緒に体験できるほか、「足腰」について自由に質問できる貴重な機会です。詳しくは『文藝春秋 電子版』の告知ページをご覧ください。
【文藝春秋 目次】芥川賞発表 受賞作二作全文掲載 井戸川射子「この世の喜びよ」 佐藤厚志「荒地の家族」/老化は治療できるか/防衛費大論争 萩生田光一
2023年3月号
2023年2月10日 発売
特別価格1300円(税込)