1週間に1日だけ断食を
巽 1週間に1日だけ食べない日を作るといいですよ。17時間以上食事をしないと、体内の脂を分解して糖を作るというフランスの研究者の論文があります。つまり17時間ファスティング(断食)して水だけで過ごすと、余分な脂がエネルギーとして使われるんです。だから僕も1週間に1日だけ絶食しています。
大村 面白いね。
巽 これをやると、まず意識が変わります。「食べないと健康になれない」「体の筋肉が落ちる」と思うかもしれないけど、全然です。崑さんくらい筋肉があれば、週1日くらい食べなくても大丈夫。お腹は減ってギューッと鳴るけど、それは腸が動いている証拠。絶食した翌日には宿便が全部下りてきます。だから僕は腸快調、超快調(笑)。
大村 それはいいことを聞いた。断食道場がいいという人がいるけどそこまではしたくない。だけど1週間のうち、家にいる日に食事を抜くくらいなら手軽にできるもんね。
巽 ああ、僕も最初は同じように考えて、日曜日にやったんですよ。外来や手術の日に動けなかったら困ると思って。失敗しました。
大村 失敗?
巽 家だと腹が減ってこっそり食べてしまう。成功したのは、一番忙しい日にしてからです。崑さんだったら役者の仕事で東京へ行く日にするのがおすすめです。
大村 なるほど、そういうこと。
巽 僕は毎週一番手術の多い日を絶食にしています。オペ室に腹がギュルルと鳴る音は響くけど(笑)。手術はいつもより早いし出来上がりもきれい。集中力が湧くからです。体中の血が胃腸で消化吸収に使われるかわりに、頭に来るから。ただ、水は大事なので飲んでくださいね。
大村 間を取って、1食だけやめるというのはどうですか?
巽 ぜひやってみてください。自分の体で実験するのがいいですよ。
大村 そうやね。
巽 注意点としては、身構えるとダメです。「よし、今日は絶食や」と思うと腹が減るんですよ。公園の散歩なんかと同じ感覚でいたら案外できてしまう。できてしまうと、意識がガラッと変わります。
大村 僕は、いいということは何でもいっぺんやってみたいんです。それで長生きできるなら。
巽 腹が減るのを楽しんで感謝の心でやれば成功しますよ。そう心といえば、ちょっと崑さんに聞いてほしい話があるんです。いいですか?
大村 どうぞ。
巽 僕は今、「医学」を「医道」にしたいと思っているんです。
大村 エッ? 医道?
巽 日本には「道」がたくさんありますよね。茶道、華道、武士道。僕は剣道をやっていたんですけど。
大村 僕も剣道やっていました。
巽 そうですか。道場に入る時、誰もいない道場に向かって礼をするように教えられました。
大村 はい。
巽 “道”と付くものには、見えないところに心があるんです。おもてなしという言葉は、表なし。表に見えない心の中で、「崑さんが幸せになりますように」と祈りながらもてなすのです。一方でサービスというものは、表に見えるものがすべてです。
大村 似ているようで違うと。