「この10年ほどの健康雑誌のトレンドを追ってみると、面白いことがわかります。股関節痛のブームが落ち着いたら次は膝、そしてふくらはぎ、肩甲骨……。これらの症状は、元をたどれば一つの問題に行き着きます。『歩き方』。いずれも正しい歩き方ができていれば症状は出ません」
そう語るのは、JCHO東京新宿メディカルセンター(旧・東京厚生年金病院)リハビリテーション室リハビリテーション士長で、理学療法士の田中尚喜氏。歩き方やトレーニングに関する著書も多く、2007年発売の『百歳まで歩く 正しく歩けば寿命は延びる!』(幻冬舎文庫)は20万部超のロングセラーになっている。いわば“ウォーキングのプロ”だ。
その田中氏は「日本人の9割は間違った歩き方をしています」と断言する。
小股で、腕を振らず、ゆっくり歩く
一体、どういうことか。
「間違った歩き方の最たるものは、『大股で、腕を振って、速く歩く』こと。特に高齢者の場合、『膝を曲げたまま』『上体を左右に大きく振る』『必要以上に足を持ち上げる』歩き方も目立ちます。こうした歩き方に対し、私は『小股で、腕を振らず、ゆっくり歩く』のが正しい歩行であり、健康寿命を延ばして、死ぬまで自分の足で歩くことに繋がると考えています」(同前)
「大股で、腕を振って、速く歩く」という間違った歩き方を続けていると、足に過剰な負担がかかり、少し歩いただけであちこち痛くなり、疲れてしまう。お尻が垂れ、太ももやふくらはぎが太くなったり、肉離れやアキレス腱断裂を起こしやすくなる。
一方、「小股で、腕を振らず、ゆっくり歩く」という正しい歩き方をしていれば、ちょっと歩いたくらいでは疲れない。なぜか。