島民の家で“宅飲み”しながら語った“青ヶ島のリアル”
最初にHさんの自宅で移住について話を聞いたあと、Mさんの自宅に移動し、Hさんも含めた島の人たちと飲み会の準備をする。この日は船が到着して食材がたっぷりあったので、みんなで海鮮とお肉を使った鍋をつくり、酒食を共にした。
HさんもMさんも、共に村役場の職員として移住してきたため、現在は村営住宅に住んでいる。島では現在、役場で職員が住む村営住宅の改装に力を入れているという。HさんとMさんどちらの住宅も新しく、内装も洗練されていた。
美味しい食事と、美味しいお酒を囲みながら、島について語り合う。
・いつも風が強いけれど、そのおかげで澄んだきれいな空が見られる
・都会では簡単に手に入るものが島では手に入らないけれど、島では新鮮な野菜や卵がいつでも手に入る
・自分のことはなんでも自分でしなきゃいけないけれど、だからこそ島には器用で多才な人が多い
・人口が少なくていつも人手が足りないけれど、その分支え合って生きている
これが、実際に滞在したことで分かった青ヶ島での“リアルな暮らし”だ。
移住してきた2人に島の生活で不便に感じることを聞いたら、少し考えた後「コンビニの新作アイスが食べられない」「たまにマクドナルドが恋しくなる」と話してくれた。あわせて、「でも、そのくらい」と答えたのが印象的だった。
なぜ島民以外にもこんなに優しく接してくれるのか?
青ヶ島滞在の7日目、とうとう最終日だ。自生している明日葉を持ち帰りたくて民家周辺を散策していたら、近所に住む方が食べごろの明日葉探しを手伝ってくれた。葉が大きくて柔らかいものが、食べごろらしい。
採れたての明日葉を抱えて、ヘリポートへと向かう。島民の方々とも、ついにお別れだ。ヘリポートの前には、見送りの人たちが集まってくれた。
みなさんと別れの挨拶を交わし、名残り惜しさを感じつつ、帰りのヘリコプターに乗り込む。当初は長いと思っていた1週間の滞在も、あっという間に過ぎてしまった。
今回の旅では、20人以上の島の人に会うことができた。「こんな話が聞きたい」と伝えると、「じゃああの人に会いに行こう」と快くつなげて、そして受け入れてくれた島の人達のおかげだ。
なぜ島民以外にもこんなに優しく接してくれるのか、加絵さんに聞いてみたところ、「島には転勤で来る東京都の職員や、移住で来る人が多い。その人達も含めてみんなで助け合って生活しているから、人のつながりを大事にする島民が多いのかも」と教えてくれた。
絶海の孤島・青ヶ島。上陸するのが困難なゆえに、他の土地と比べて、生活するうえで制限されることも多い。しかしそこには、青ヶ島の歴史や文化、そして今あるものに感謝をしながら、豊かな生活を送っている島民の姿があった。