それに監督も応える。
「正直、アルバムは捨てられるけど、サインは無理。捨てられないでしょ。だって、これ(サイン)を書いた時の彼は…、私、(彼を)かばってるね」
女性同士の対話から率直に語られる葛藤
この映画には一つ特筆すべき特徴がある。それは、徹底して女性の視点で貫かれていること。なにせカメラの前でインタビューに答えているのは全員が女性だ。その女性たちに話を聴く監督も女性で、自らも映画に出ている。
女性ファンの応援で成功した「推し」たちが、同じ女性の尊厳を踏みにじる犯罪を犯したことが許せない。でも同時に、その「推し」が大好きで応援してきた自分もいる。
そのことが結果的に「推し」の犯罪に加担したことにならないだろうか? そんな葛藤が率直に描かれている。
監督の「推し」の性加害疑惑を早い段階で記事にした記者がいる。やはり女性だ。いまだに「推し」たちをかばい続ける一部ファンの心理についてこう語った。
「パク・クネ元大統領を支持する人たちと同じ心理じゃないですか?」
有罪判決を受けた元大統領は無実だと主張する人たちと、性加害に問われたスターを今も支持するファンは根っこで同じという指摘。そのパク・クネ元大統領も女性だ。
不祥事をなあなあで済まそうとする日本
韓国で不祥事を起こし、母国で芸能活動を続けられなくなった韓流スターが、日本で芸能活動を再開するケースが相次いでいる。
韓国では許されないのに、なぜ日本では許されるのか? 韓国の元ファンの間では、アイドルたちの罪悪を“水に流す”かのような日本のファンに批判が広がっているという。
それを見て感じるのは、芸能界にせよ、政界にせよ、過去の悪しき出来事にそれなりの“けじめ”をつける韓国社会の姿。日本とはだいぶ様相が異なるようだ。