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「推し」が性犯罪で捕まって…『成功したオタク』に社会派ジャーナリストが感じた日韓の差

「推し」が性犯罪で捕まって…『成功したオタク』に社会派ジャーナリストが感じた日韓の差

相澤冬樹のドキュメンタリー・シアター

2024/04/07

source : 週刊文春CINEMA オンライン オリジナル

genre : エンタメ, 映画, テレビ・ラジオ, 社会, 国際

note

 日本は性加害に“寛容”すぎるのではないか? 

 私が取材した事件ではこんなことがあった。男が内縁の妻の小学生だった娘に長らく性的虐待を繰り返していた。自宅が火事になりその娘が亡くなった。娘の遺体から被害をつかんだ警察は、その事実を突きつけながら男にありもしない「放火殺人」を自白させた。

 結局は裁判のやり直しで無罪になるのだが、その無罪判決でも娘への性虐待は事実だと指摘されている。

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 にもかかわらず「過去のこと」として触れたがらない支援者が男の周囲に多い。時効の関係で今さら罪には問えないが、犯した罪は罪として受け止めるべきではないだろうか?

 日本は不祥事について何となく「なあなあ」で済ませ、なかったことにしてしまう空気があるように思う。それはここ数年の取材でずっと感じていることだ。

 時の首相の妻が名誉校長を務める小学校の用地として、財務省が国有地を格安売却した。その経緯を記した公文書を改ざんして「なかったこと」にした。

 これほどの大不祥事なのに、公務員も政治家も誰も刑事責任を問われない。それでいいの?  

 スーパーアイドルや元大統領の不祥事にとまどいながらも向き合う韓国の社会を見るにつけ、思うのは「日本人、これでいいのか⁉」

 そんな思いを噛みしめながらご覧いただきたい。ちなみに東京での公開初日、3月30日は全回満席で、観客はほぼ女性だった。だがこの映画、むしろ男性必見だろう。

 

『成功したオタク』

STORY
 あるK-POPスターの熱狂的ファンだったオ・セヨンは、「推し」に認知されテレビ共演もした「成功したオタク」だった。ある日、推しが性加害で逮捕されるまでは。

 突然「犯罪者のファン」になってしまった彼女はひどく混乱した。そして同じような経験をした友人たちに話を聞くことにした。信頼し、応援していたからこそ許せないという人もいれば、最後まで寄り添うべきだと言う人もいる。ファンであり続けることができるのか。いや、ファンを止めるべきか。彼を推していた私も加害者なのではないか。かつて、彼を思って過ごした幸せな時間まで否定しなくてはならないのか――。

STAFF & CAST
監督:オ・セヨン/2021年/85分/韓国/配給:ALFAZBET/公開中

「推し」が性犯罪で捕まって…『成功したオタク』に社会派ジャーナリストが感じた日韓の差

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