普段何気なく掛けているメガネ。身近なツールである一方で、街で見かけるショップやメガネの専業メーカーがどのようなスタンスで、どのようなビジネスを展開しているかまでは案外知らない人も多いだろう。そこで、今回は“メガネをビジネスする”をテーマに業界の最前線で活躍する経営者に連続インタビューを敢行した。
第1回は、アイウエアブランドJINSを運営する株式会社ジンズ代表取締役社長の田中仁氏。メガネを気分やシーンによってかけかえる。低価格化によりメガネの新しい在り方を提案したJINSは、ブルーライトカットをはじめとした“機能性アイウエア”で新たな市場も創り出した。
メガネを通じたライフスタイルの変革に挑戦し続けているJINSの原動力とは。そして、これからの戦略とは――。
メガネの民主化をしたかった
――この10年でメガネ業界は大きく変化しましたが、田中社長はその変化をどうご覧になっていますか?
田中 まず挙げられるのが、単価下落によるマーケットの縮小。一方で現在はメガネをファッションとして取り入れる人が増えてきて、少し持ち直してきています。とはいえ、まだ洋服ほど頻繁に替えるものにはなっていませんが。
――JINSは1988年に設立され、2001年よりメガネ事業に進出されています。業界外から参入されて、当時のメガネ業界はどのように映りましたか?
田中 メガネは本来、お客様が主役であるはずなのに、これまで販売店側に主導権がありました。たとえば、視力データをお客様に公表しないなど。レンズについての情報を知らされないまま、店に勧められるままに買っていた。それに、2万円のメガネを買うつもりが、レンズ込みで最終的に5万円になった、というようなことも多かったですよね。そうした意味で、我々はメガネの民主化をしたと思っているのです。
――メガネ選びの主権をお客様に、ということですか。
田中 はい。その一つが、2009年に導入したレンズの追加料金無料という価格体系です。JINSでは、一般に超薄型といわれる屈折率1.74のレンズでも0円。もちろん薄型のレンズにすると原価は高くなりますが、それは店側の都合でお客様からしたら釈然としない内容だったはずなのです。だからこそ、ゼロにしたかったのです。それまで高い追加料金を払っていた方からは、「JINSは神」なんて言われたこともありましたよ(笑)。もちろんメガネ業界においては非常識なことだったので、「あの会社は潰れるだろう」というようなことも言われました。これでJINSは終わったと。