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JINSが「メガネ業界の非常識」と言われながらも成功した理由

「メガネをビジネスする」株式会社ジンズ・田中仁社長インタビュー #1

2018/04/17

“機能性アイウエア”で新市場を創出

――たしかに、レンズの追加料金0円というのはインパクトがありました。では、この価格体系の導入が、ビジネスとしての飛躍につながったのでしょうか。

田中 その一つであることは間違いないです。じつはこの2009年というのは、会社のビジョンを決定し戦略を大きく変えた時期でもあるのです。というのも、メガネ業界に参入した当初は、先ほどお話ししたメガネの民主化、つまり情報の囲い込みをしないということと、フレームの低価格化だけで勝てると思っていたのです。けれど、類似の店舗も次々に出現して競争が激しくなるなかで、次の差別化が急務となった。そうして打ち出したのがレンズの追加料金0円、そしてもう一つが軽量メガネの「Airframe(エアフレーム)」です。

 

――JINSが打ち出した機能性アイウエアの第一弾ですね。

田中 このエアフレームは、これまでメガネには使われていなかった素材を使い、“軽さ”に特化することで、これまでにないかけ心地を実現しました。すると既存のメガネのかけ心地にストレスを感じていた方たちから支持され、爆発的にヒットしたのです。その後、同業他社からも似たようなフレームが発売されました。

――軽量メガネというジャンルが確立されるきっかけとなりましたね。

田中 その次に大きかったのは、やはりブルーライトカット機能を兼ね備えたパソコン用メガネ。「JINS PC(現:JINS SCREEN)」ですね。

――これは本当にヒットして、ブルーライトという言葉も広く認知されました。

田中 発売は2011年9月ですが、2012年11月には累計販売本数が100万本を突破し、「JINS=機能性アイウエア」というイメージが不動のものになったと思っています。

 さらに、現在ブルーライトカットよりも、もっと大きな存在になる可能性を秘めた製品を発売しているのですよ。バイオレットライトを透過するレンズです。

 

バイオレットライトで近視を抑制!?

――バイオレットライト……ですか?

田中 太陽光にはバイオレットライトという紫外線とブルーライトの間に位置する波長360~400nmの間の光が含まれています。じつはこの光に、近視を抑制する可能性があることが最新の研究でわかりました。現在ビルの窓も車のフロントガラスもメガネのレンズもUV400がほとんどで、このバイオレットライトを遮ってしまっていることが近視の増加と相関関係がありそうなのです。そこでこのレンズは、眼に有害とされる紫外線とブルーライトをカットしながら、バイオレットライトを通常のレンズより多く透過するものになっています。

――どういった経緯で商品化に至ったのでしょうか。

田中 産学連携でともに研究を行なっていた慶應大学医学部が、このバイオレットライトの作用を発見したことがきっかけです。先ほどお話ししたパソコン用メガネもそうなのですが、我々は2008年から産学連携をスタートさせていて、すべての製品にエビデンスを取り、サイエンスとともに成長していこうと決めました。

 というのも、当社の商品は価格が安いではないですか。それは多くの人に喜ばれている一方で、「JINSの製品って本当に大丈夫なの?」と疑いを持つ人もいるわけです。だからこそ、きちんと科学に基づいた研究開発を行なうことにより、エビデンスに裏付けられた製品を発売したいと思ったのです。ただ“なんとなくいい”というだけでは、許されないなと。メガネの小売業で社内にR&D(研究開発)室を持っているのは、世界でも我々ぐらいだと思います。