(「JINSが『メガネ業界の非常識』と言われながらも成功した理由」から続く)
メガネ業界の常識や慣習を疑い、数々のイノベーションを起こしてきた株式会社ジンズの田中仁社長。メガネのさらなる可能性を追求する田中氏は、「従来の“メガネを販売するビジネスモデル”から脱却したい」と話す。果たして、その真意とは――。
外を見るメガネから、自分を見るメガネへ
――メガネを販売するビジネスモデルからの脱却!? もうメガネは売らないということですか?
田中 いえ、そういうわけではありません。メガネをたくさん買ってもらって、売上と利益が上がる。そうした既存のビジネス以外の可能性もあるのではと考えています。
もちろん売上はあるに越したことはないんですが、もはやそういう時代ではないと思っています。つまり、これからはモノ、ハードの価値が相対的に下がると思っています。すでにシェアリングサービスが人気だったり、モノを所有する意識が低くなっていますよね。そうすると、メガネもいずれそうなるかもしれない。
もしかしたら、点眼薬で近視が治る時代だって来るかもしれないですよね。そうしたなかでメガネの役割って何だろうと考えたとき、その人自身を知るウェアラブル・デバイスとしては価値があるのではないかと。
――それが、2015年に登場したウェアラブル・デバイス「JINS MEME(ジンズ・ミーム)」ですね。
田中 はい。これも産学連携のなかから生まれた製品で、レンズを介して“外側を見る”ものから、“自分を見る”という発想の転換です。
もともとジンズ・ミームは、「脳トレ」で有名な東北大学の川島隆太教授とブレストをしているなかで、「眼は脳のアウトプット機関としてかなり大きな割合を占めている」というお話を聞いたことがきっかけで。「目は心の窓」とか「目は口ほどにものをいう」とか言いますよね。目を理解すると脳を理解できるという話から開発が始まっています。