日付が変わって10月30日の午前2時頃、両親が眠ったのを確認したケンジさんは自殺を決意。練炭に火をつけ、ベッドに横たわった。
部屋のドアにはガムテープなどで目張りをしていたが、煙がもれペットの犬が吠え、異変に気づいた両親がケンジの部屋に向かうと、煙が充満する中にケンジさんが横たわっていた。
両親は意識を失っているケンジさんを部屋からすぐに運び出し、119番通報をして救急車が着くまでの間は父親が心臓マッサージをした。
「父親に心臓マッサージをされているあたりで意識が戻りました。お父さんが心肺蘇生していることはわかったんですが、自分が熱傷していることは気づきませんでした。救急隊員の人がいっぱい入ってきて、運ばれていく間も『迷惑かけちゃったな』と 後悔でいっぱいでした」
一命を取り留めたものの、お尻と手にやけどを負い、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と解離性障害の診断も受けた。入院中に父親に理由を聞かれて、ケンジさんは「欠点指導」が辛かったと打ち明けた。母親は「あの高校に行かせなければよかった」と泣いていた。父親も意気消沈していた。
「実は、指導の後、自殺を図ったんですが…」
「ケンジは『自分は弱くてだめだと思った。単位のことをほのめかされてビビった』と言っていました。また『留年するぞ』とも言われて、かなり深刻に受け止めていたようです。焦り、恐怖があったんだと思います」(父親)
ケンジさんが自殺未遂に及んだ30日の夕方、父親は高校に向かうと、学年主任のA教諭との面会を求めた。しかし、回答は要領をえないものだった。
父親「28日の指導はなんだったのか」
A教諭「私のところに来るのだから、欠点指導、印鑑もらいでしょう」
父親「実は、指導の後、自殺を図ったんですが」
A教諭「明確なやりとりの内容や様子についての記憶がない」
ケンジさんの父親は「本来は子どもたちの単位取得を支援するはずの『欠点指導』という仕組みが、歪んでいるのでは」と感じたという。