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――現在、他に広瀬門下の奨励会員はいませんが、それはたまたまなのでしょうか。 北海道研修会幹事という立場上、入門を求められることもあるのではないかと拝察します。

「弟子入りを頼まれたのが山川だけなので、たまたまといえばそうなりますね。大人数弟子を取るつもりはないので、北海道の子に関しては他の棋士と相談しながらになりそうです」

――プロ棋士としての弟子に期待することは何でしょうか。

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「能力的にはもう少し早く上がっていてもおかしくはなかったはずなので、遅れた分をこれから巻き返してほしいですね。いずれは師匠の実績を軽く超えてほしいです(笑)」

――実際に公式戦で盤を挟むことになったら、それを広瀬さんはどのように迎えるかということに想像はつきますか。

「今は想像つきませんがいずれは当たることにはなるので、心の準備はしておくつもりです。始まってしまえば関係ないかもしれませんが、ひょっとしたら感慨深い気持ちになるのかもしれませんね」

今期の高橋が昇段した理由

 また別の日に、高橋とVSを行っている飯島栄治八段に話を聞いた。

高橋新四段と自宅の研究部屋でVSを行う飯島栄治八段(左)

――高橋さんとVSを始められたきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

「彼が三段になったくらいでしょうか。記録係をよく務めているので、マジメだなと思い誘いました。実際に始まったのは23年の6月からですね。当初は私の方が勝っていましたが、最近はやっとこ指し分けに持ち込むくらいで、苦戦しています」

――VSにおける高橋さんの印象はどのようなものでしょうか。

「最新型を突っ込んでくるので、志の高い居飛車党だと思います。礼儀正しく、私以外にも先輩棋士からかわいがってもらえているイメージがありますね。最近はより序盤を重視している感じがあり、以前ほど序盤でリードをさせてもらえません」

――飯島八段は高橋さんの他にも、今期の三段リーグで好成績だった数人の三段とVSを行っていると聞きました。今期の高橋さんが昇段した理由についてはどのようにお考えですか。

「ハングリー精神のようなものがありましたね。例えばVSの日程について、他の三段は『その日は例会直前なので……』ということもありました。三段にとってはリーグの対局が最も大事なのでそれに備えることも一つの見識ですが、彼は『いつでも大丈夫です』と、貪欲さを感じましたね」

 

 両者ともに20歳を過ぎてからの棋士生活スタートは決して早いものではないが、これからいくらでも取り返すチャンスはある。自身も25歳での四段昇段だった佐藤七段は、打ち上げが終わったあと「高橋が上がって師匠に伝えたのは私です。岡部の時もそうでした。職権濫用ですよね」と笑う。続けて「高橋が3勝1敗でスタートした時から、師匠は『ずっと胃が痛い』と言っていました。さぞかしホッとしたでしょうね」とも。

 真の意味で師匠を安堵させるべく、新四段2人のこれからの活躍に期待したい。

写真=相崎修司

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