4月1日付で新たなプロ棋士がデビューした。山川泰熙新四段と高橋佑二郎新四段である。2人が夢をつかみ取った第74回三段リーグ最終日の模様と、新四段をよく知る棋士に聞いた話を紹介する。
最終戦に昇段の可能性を残した山川、高橋、生垣
3月9日に行われた第74回奨励会三段リーグ18、19回戦。最終2戦の開始直前における上位陣の成績は以下の通りである。
(14)山川泰熙 12勝4敗
(23)高橋佑二郎 12勝4敗
(30)岩村凛太朗 12勝4敗
(44)村上邦和 12勝4敗
(2)木村友亮 11勝5敗
(8)生垣寛人 11勝5敗
(19)吉池隆真 11勝6敗(18回戦が抜け番)
(1)山下数毅 10勝6敗(次点1あり)
(カッコ内はリーグ順位)
15回戦を終えた時点では山川が12勝2敗で単独トップ、高橋、岩村、村上が11勝3敗で追う構図だった。ところが、16・17回戦で山川が連敗し、3敗勢もみな1敗したので混戦の様相を呈していた。また、6敗最上位の山下が逆転昇段すると藤井聡太竜王・名人以来の中学生棋士誕生ということもあり、注目を集めていた。
午前中に行われた18回戦が終わり、上位陣の成績はこのようになった。
(14)山川泰熙 13勝4敗
(23)高橋佑二郎 13勝4敗
(8)生垣寛人 12勝5敗
(30)岩村凛太朗 12勝5敗
(44)村上邦和 12勝5敗
(2)木村友亮 11勝6敗
(19)吉池隆真 11勝6敗
(1)山下数毅 10勝7敗(次点1あり)
自力昇段の権利がある山川と高橋、そして生垣は勝ったが、他の上位陣は皆敗れた。この結果、最終戦に昇段の可能性を残したのは山川、高橋、生垣の3人。山川と高橋は自身の星に関わらず生垣が敗れた時点で昇段が決まる。
生垣さんが様子を見に来ていて「ああ、これはダメだな」と
そして最終結果は以下の通りとなった。
(14)山川泰熙 14勝4敗 四段昇段
(23)高橋佑二郎 14勝4敗 四段昇段
(30)岩村凛太朗 13勝5敗 次点
階下では報道陣の他、新四段を祝おうとするプロ棋士が待っていた。名前を挙げると佐々木勇気八段、千田翔太八段、伊藤匠七段、本田奎六段、斎藤明日斗五段、岡部怜央四段である。報道陣の立場では対局室のある4階には立ち入りにくいとしたものだが、棋士仲間ならば聞きやすいのだろう。まず生垣の敗戦が伝えられ、山川と高橋の昇段が決まった。結果だけを見ると自力の2人が連勝という波乱ナシということになるが、高橋の最終戦は必敗の将棋を大逆転したものだったそうだ。
「局面がどうにもならなくなっているとき、ふと見ると生垣さんが様子を見に来ているのがわかったんですよね。自身が勝ったからこっちを見に来たのかと思うじゃないですか。『ああ、これはダメだなと』」