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「奨励会生活は苦しいことばかりでした…」それでも、2人が将棋のプロとして夢をつかみ取った理由とは

「奨励会生活は苦しいことばかりでした…」それでも、2人が将棋のプロとして夢をつかみ取った理由とは

第74回奨励会三段リーグ最終日レポート

2024/04/05
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――お2人とも前節の例会で敗戦を喫していますが、それからどのような気持ちで本日を迎えられたのでしょうか。

山川「前回は大阪遠征で連敗して、帰りの新幹線もどうやって乗ったか覚えていません。世界が白黒にしか見えていませんでした。ですがまだ自力があるのでどうにか気持ちを立て直して、将棋をやるしかないと日々を過ごしていました。前回は事前の準備をし過ぎて余裕がなかったので、今回は一昨日くらいからあまり将棋の勉強をせず、体と心のメンテナンスを心掛けていました」

高橋「前回の1局目が終わった時点でチャンスと思ってしまい、2局目を負けました。帰りのことは覚えていませんが、まだ自力ということで、多くの棋士の方から練習将棋を教わりました。最後の追い込みですね。何もしない時間を作ると緊張に押しつぶされそうなので、できるだけ予定を入れるようにしていました」

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高橋新四段は散歩が趣味という。「これまで行ったことがない場所で歩ければいいですね」と笑顔で話した

――プロ棋士になりたいと思ったのはいつ頃でしたか。

山川「プロ志望がいつからかは明確に覚えていませんが、将棋がすごく楽しかったので上を目指していた結果、プロになりたいと思った気がします。」

高橋「父に大会の存在や奨励会のことを教わって、自然に奨励会に入ったという感じですね」

――これから、どのような棋士になりたいとお考えですか。

山川「師匠が上の舞台で待っているので、そこで師弟対決ができるように研鑽を積んでいきたいですね。普及にも取り組んで、将棋を多くの人に知ってもらいたいと思います」

高橋「何か一つでも大きな結果が残せればと思います」

「これからは中終盤でも力を発揮できるようになれば」

――今期の好成績の要因を挙げるとするとどうでしょうか。

山川「永瀬さん(拓矢九段)の研究会に呼んでいただきました。言葉で語る方ではありませんが、その背中を見て、より真摯に将棋に取り組むようになり、永瀬さんに『研究会をしてよかった』と思われたいという気持ちになったのが大きいですね。去年の元旦に研究会の代打で呼んでもらったのが最初で、それから固定の研究会に呼んでもらうようになりました。研究会は将棋にひたすら打ち込むという空気感があり、あれだけのトップがこれだけ努力している、自分も頑張らなければという気持ちになりました」

高橋「佐々木勇気さん、斎藤明日斗さん、岡部さんと多くの棋士に研究会が終わった後の居残り練に付き合っていただき、早指し将棋をたくさんこなしました。前期リーグの最後あたりから手が伸びていたと思います。研究会には三段になってから多くの棋士に誘われるようになりました。その場で棋士の先生の将棋に対する情熱を知って、自分も昇段できたのかと思います」