登場人物の魅力、そしてリアリティ
結果として、『不祥事』を原作としたドラマ「花咲舞が黙ってない」は、二〇一四年に続き二〇一五年にも続編が制作されるほどの人気シリーズとなった。ドラマ化に当たっての私からの様々な提案を快く受け入れて下さった池井戸さんには、感謝しきりである。また、「脚本には口を出さない」という方針の池井戸さんに、何度もプロットや脚本を読んでいただき意見を頂戴した。今までの池井戸潤原作ドラマの中で、一番池井戸さんの手を煩わせたのではないかと感じ、とても恐縮している。
ドラマ制作中に、よく雑誌の取材で「池井戸作品の魅力」について聞かれた。私はとてもそんな分析をする立場にないが、自らが感じたことで言えば、ひとつは言うまでもなく登場人物の魅力、そしてもうひとつはリアリティだと思う。もちろん、『不祥事』はエンタテイメント性のある小説で、とても現実ではありえなさそうな事件ばかりが起こる。だが、その根底にある人間ドラマにはリアリティがあり、とても人間臭い。だからこそ、銀行という自分とはまるで接点のない場所が舞台の物語なのに、読者は入り込んでしまうのではないだろうか。
振り返ってみると、どっぷりと「花咲舞」に浸かっていた二年あまりだった。正直、まだドラマが終わった実感がない。そんな私に朗報が入ってきた。池井戸さんが『不祥事』の続編となる連載を読売新聞で始めるという。タイトルもドラマと同じ、『花咲舞が黙ってない』だ。私の知らない舞の新たな物語が繰り広げられると思うと、それだけでワクワクする。はたしてどんな内容になるのか、花咲舞の一ファンとして、今から楽しみで仕方ない。
2016年2月
(かとう・まさとし 日本テレビプロデューサー)