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この春、この本で読むべき池井戸潤の小説

この春、この本で読むべき池井戸潤の小説

TVドラマ化『花咲舞が黙ってない』解説 #2

2024/04/12
note

4月13日からスタートのドラマ『花咲舞が黙ってない』

 今田美桜が演じる花咲舞が、大手銀行を舞台に不正を見逃さず、弱い立場の人たちのために立ちあがる痛快インターテインメントだ。

 放送を記念して、池井戸潤の原作『花咲舞が黙ってない』(中公文庫/講談社文庫)と『不祥事』(講談社文庫/実業之日本社文庫)に収録されている、文庫解説を全文公開する。(全3回の第2回)

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『花咲舞が黙ってない』(講談社文庫)

不祥事

 ときは二十世紀の終わり頃。

 東京第一銀行事務部臨店指導グループに、ひとりの女性がいた。

 ときとしてぶちキレることから“狂咲”との異名を取る花咲舞である。

 極めて有能な銀行員ではあるが、彼女には、上司を上司と思わない言動も多々あった。その点では“問題社員”である。しかしながら、銀行を良くしようというまっすぐな気持ちは人一倍強い。銀行内部でのみ通じる価値観やロジックに蝕まれておらず忖度なしに突っ走るので、一部の人間からすると煙たくて仕方がないのだが、その想いは本物なのだ。

 そんな花咲舞が、上司である臨店指導グループ調査役の相馬健とともに、いくつもの謎を解きつつ、大きな“敵”と闘う姿を描いた小説が『不祥事』だった。

 本書『花咲舞が黙ってない』は、その続篇である。続篇とはいえ、もちろん単体で読んでも愉しめるように書かれているのでご安心を。