政治家の娘の「不正入学」
だから、彼らは不公平な社会が許せない。今回の選挙で曺国氏が率いる祖国革新党が支持を集めたが、「既存の進歩派勢力が分裂しただけ。若い世代は見向きもしなかった」(韓国政界筋)という。曺国氏の娘が韓国の名門、高麗大学に入学する際、不正を働いたからだ。高麗大ではスキャンダルが出始めた2019年夏から毎週末、学内で「ロウソク集会」が開かれた。毎回、100人以上の学生が集まり、「不正を許すな」「娘は学園生活を楽しむ資格はない」と怒っていた。
この怒りは、大統領の妻としてセレブな生活を楽しむばかりで、女性の権利向上には動かない金建希夫人、自分たちの権利を守ることに汲々とする(ように見える)医師たち、自分の逮捕を免れるために党を私物化する李在明氏、大統領と親しいというだけで、専門分野でもない駐オーストラリア大使や大統領室市民社会首席秘書官に就任してしまう尹氏の側近たちに向かった。
一方、前出のソウルに住む50代の男性は、アングリーピープルの特徴の一つとして「若くて社会経験が浅いうえ、SNSを使いこなすため、直情的・爆発的に行動する傾向がある」と語る。これが、その都度の社会的な話題ごとに、支持する政党がコロコロ変わった理由なのだという。
世襲や多選議員が少ないワケ
これからの韓国は、アングリーピープルの怒りをすべて吸収できるほどの社会・経済基盤を作れないかもしれない。日本政府関係者も「すべての人に分配できるほどの経済規模や社会システムがないと、若い人たちの怒りは収まらないだろう」と語る。
韓国議員で、日本のような世襲や多選議員が少ないのは、もともと、こうした「不公平」「不正義」に怒る国民感情に配慮した結果だ。ただ、今回の総選挙の立候補者をみると、その実力はともかく、「各政党の実力者と近しい関係」から選ばれた人が多数いた。このシステムを変えない限り、尹錫悦政権のレイムダック化は止まらないし、若い人々の怒りが収まることはないだろう。別の日本政府関係者は「今後、この状態が続けば、人材の海外への大量流出現象が起きるかもしれない」と語った。