なぜ、40歳以下の世代は怒るのか
尹政権を悩ませているのが、比較的保守的な考えが多いとされる40歳以下の若い世代での不人気ぶりだ。リアルメーターの4月第1週世論調査によれば、尹大統領支持率は20代が32%、30代が33.9%。60代の同45.1%の7割強程度の数値だ。彼らの支持率は元々「保守的」と言われる傾向からか、40代の同23.6%、50代の同31.8%よりは高い。
ただ、40~50代は1980年代の民主化闘争の記憶を残す世代で、ほぼ「進歩支持」を変えない世代という特徴がある。韓国の40歳以下の世代は保守的とはいえ、その時々の「不正義」で怒り、支持層を変えるのだ。これが、韓国総選挙の期間中、保守と進歩の支持がたびたび変動した背景と言える。
では、なぜ、40歳以下の世代は怒るのか。ソウルに住む50代の男性は「それは、韓国の戦後の歴史と大きな関係がある」と語る。1960年代までの韓国は失業率の高い、世界の最貧国の一つだった。当時、ソウルに出張した元外交官は「街は埃っぽく灰色に見えた。みな、所在なげにゆっくり、うつむいて歩いていた。目的があって歩いているようにはとても見えなかった」と語る。
韓国人が「漢江の奇跡」として世界に誇る経済成長は、朴正熙(パク・チョンヒ)政権の開発独裁とともに、個々人の「自分は良いから、せめて子供を貧困から脱出させたい」という強い思いから実現したとされる。
「こんなに努力したのに、こんな就職口しかないのか」
「貧困からの脱出」としての手段が教育だった。韓国統計庁によれば、韓国の高校生の1日当たりの平均勉強時間は8時間を超える。ほとんどの高校生が通う学院(塾)では「高校生活の3年間は(大学受験に励むため)お前たちの人生から削り取れ」と言われる。激烈な競争は大学に入っても続く。少しでも良い就職を勝ち取るため、「スペック」と呼ばれる付加価値をつけるために皆必死になる。
知人によれば、韓国企業が求めるTOEICの最低スコアが700点以上。ソウル勤務時代の2017年ごろに取材した大学生は「良い会社に入りたかったら、900点くらいとらないとだめです」と語っていた。
韓国統計庁によれば、15~29歳の青年失業率は24年2月現在6.5%で、26万4000人の青年失業者がいる。この数値は24年3月時点での韓国全体の失業率2.6%の倍以上の数値だ。これは、「こんなに努力したのに、こんな就職口しかないのか」と怒る若い人々が多い結果だとされる。