尹政権はこれまで、検察官のほか、尹氏の学歴である「ソウル大卒」の人物、「MBライン」と呼ばれる李明博(イ・ミョンバク)政権当時の幹部らを次々に起用してきた。極めつけが、妻の金建希(キム・ゴンヒ)女史の「特別扱い」疑惑だ。尹氏は1月、金女史がからむ株価操作疑惑事件を捜査する特別検察官任命法案に再議要求権(拒否権)を行使した。昨年11月には金女史がブランド品のバッグを受け取る隠し撮り映像がYouTubeで公開されたが、尹氏は直接の謝罪を避けた。
乱高下する支持率
ところが選挙戦中盤で、保守陣営が息を吹き返した時期もあった。韓国の世論調査会社リアルメーターが2月26日に発表した世論調査結果では、尹大統領の支持率が41.9%になり、昨年6月以来、約8カ月ぶりに4割台を回復した。このころの保守陣営では「過半数(151議席以上)の獲得も夢ではない」という威勢の良い言葉が飛び交っていた。この背景には、二つの事情がからんでいた。
一つは共に民主党の公認候補選びを巡る混乱だ。同党では、公認選びから漏れた議員らが「李在明(イ・ジェミョン)代表が党内の反対勢力を排除しようとしている」などと反発し、離党者が相次いだ。公認漏れした現職議員の多くが文在寅支持派らで、李在明代表と距離を置いていたため、「李在明氏が今後、(国会開会期間中は、議会の賛成多数が必要になる)逮捕を免れるため、自分の側近たちで党内を固めようとしている」という批判を浴びることになった。
もう一つの事情は、尹錫悦政権が2月6日に発表した大学医学部定員の大幅増員政策だ。韓国では「まともな医療が受けられない地方がたくさんある」と言われている。医師は自由診療で儲かる皮膚科や整形外科などに流れ、内科や外科、小児科などの診療科目の医師が不足する事態も招いている。有権者は「医師の不正義」をなじる尹政権の医療改革を拍手喝采して迎え、支持率が上向いた。
「不公平」に再び焦点
そしてさらに、選挙終盤になると保守陣営の支持が再び急降下した。リアルメーターによれば、尹大統領の支持率は2月第4週の41.9%をピークに、再び下降し始めた。3月第3週から4月第1週まで3週連続して36%台にとどまっている。国民の力も2月第5週には46.7%あった支持率が4月第1週には36%にとどまった。この間、共に民主党は同じ時期で比較した場合、39.1%から44.6%に上昇した。
これは、尹政権の「不公平」に再び焦点が当たった結果だった。尹政権は、職権乱用の疑いで捜査を受けている李鍾燮(イ・ジョンソプ)前国防相を駐オーストラリア大使に就任させたため、「捜査逃れだ」という批判を浴びた。李氏は結局、大使を辞任した。3月には、元KBS記者で、大統領室の黄相武(ファン・サンム)市民社会首席秘書官が舌禍事件を起こして辞任した。尹氏が側近を特別扱いする姿が「長ネギ事件」もあって市民の怒りを買い、「KAIST強制退場事件」で若者の反感を買う結果になった。