ファンの人たちに、どういう風にチームを愛してもらうか
近鉄を合併・吸収したオリックスと楽天の間での「選手分配ドラフト」は、新生オリックスがまず25選手をプロテクト。そこから外れた選手を、楽天がまず20人、続いてオリックスが20人、再び楽天が20人指名するという方法だった。
そのオリックスと近鉄から“溢れた選手たち”には主力級や若手の有力株が少なく、20代後半から30代の中堅、ベテランに偏っていた。はっきり言えば寄せ集めのチームだ。
「必ず最下位になる覚悟だった」
田尾は当時の思いをそう振り返った。だからこそ痛感したことがある。
「楽天で1年間、監督させて頂いて感じたのは、やっぱりプロ野球は勝つだけじゃないんだ、っていうね。それをものすごく身をもって感じたんだよ。やっぱり、ファンの人たちにどういう風にこのチームを愛してもらうかということを、フロントも含めて首脳陣も考えないといけない。弱かったら弱いなりに、何をお見せできるんだろうっていうね。そういうものを、もっと真剣に考えないといけないと思うね」
チームを自分の持ち物だと思わないで
仙台での1年目。予想されたように勝てなかった。
それでも、仙台のファンに楽しんでもらいたい。田尾はどんなに負けても、どんなゲームの後でも、試合後の監督インタビューを一切断らなかった。
「これ、当たり前やと思うんや。やっぱり、現状を皆さんとともに分かち合いたいというかね、みんなで創りましょうよ、このチームを。そういう感覚だと俺は思っていた。今、楽天は弱いけど、これ以上弱くなることは絶対にない。だから、この1年目の一番弱いチームを見られるファンの方々は幸せですよって、俺は思ってたんだから。だってこれから、必ず強くなる。1年目、こんなに弱かったんだよ、っていうのを、自分の子供や孫に話ができる。中日にも、そういうチームになってもらいたいねん。
やっぱり『おらがチーム』なんです。我々もチームなんだと。三木谷(浩史・東北楽天オーナー)さんにも言ったんだけど、自分の持ち物だと思わないでください、50%はファンの人たちのものですよと。中日だって半分はファンの人たちのものだという意識でいろいろなことを考えてもらわないと、自分たちの利益ばっかりを考えていくと、違った方向に行きますよと。だから、俺は迷った時に何を指標にするかというと、ファンの人たちはどっちを選ぶのか、どっちを望むのかということなんですよ」
落合とは、その“目線”が、違ったというのだ。