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一コマに滲む、壮絶な努力と記憶力

岡本 表紙も「ファン向け」に相当ブラッシュアップを重ねましたよね。「本当にこの方向性でいいのか?」と何度も案を練って。

―― 当初発表されたデザインから大きく変わりましたものね。収録作品のメインカップルが賑やかに勢ぞろいしていて、『らんま』ファンの友人も(早乙女)乱馬と(天道)あかねちゃんのツーショットにすごく喜んでいました。

森脇 ああ、よかったです。表紙はオーロラ加工でめちゃくちゃピカピカするので、本棚に置くと気持ちがアガりますよ(笑)。

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『高橋留美子原画集』表紙

―― イラストの合間や原稿の柱に高橋先生のコメントがちりばめられているのも印象的でした。漫画家としての背骨が感じられる名言ばかりですね。

森脇 収録するイラストや原稿を見ていただきながらインタビューしたんです。高橋先生ご本人が思い出深いコマを各作品からセレクトした「私が選ぶ! 語る! このコマが好き」のコーナーも、色々な気づきがあるのではないかと思います。

―― おっしゃるとおりで、コマ運びや台詞にどれだけ苦労したかを明かしていらっしゃって発見の連続でした。シリアスなシーンはもちろん、読者からすると数秒も立ち止まらず「アハハ」と笑って読んでいたあのギャグにも、こんなにも長く深い苦慮と熟考があったのかと……。裏を返せば、それだけ考え抜かれているがゆえにサクサクと楽しく読めるのですね。

『犬夜叉』からは日暮かごめの想いがあふれた重要なシーンも選ばれた/『高橋留美子原画集』より

有藤 あのコーナーは私がインタビューしたんです。最初はもうちょっとアバウトな企画で「先生にとって印象的なシーン」だったんですけど、その切り口でやってもあんまり面白くないかもと思いまして。どんどん細かくなり、最終的に「一コマを語る」に行き着きました(笑)。

―― ピンポイントな視点だからこそ新鮮で興味深かったです。高橋先生が大変な細部まで制作時のエピソードを覚えていらっしゃるのがまた衝撃でした。『うる星』にいたっては40年以上前の作品ですが、描かれたときの気持ちが鮮明に残っていらっしゃるんですね。

岡本 先生の記憶力には驚かされます。「歴代の担当編集者のことも、どんな人柄や仕事のやり方だったか覚えています」とおっしゃっていました(笑)。