どうなるんだろう、『あさイチ』。四月二日の朝八時十五分、多くの視聴者が多少の緊張感を抱きつつ番組開始を待っていたはずだ。

 近江友里恵アナウンサーと博多華丸・大吉。誰がこのキャスティングを思いついたのか。『ブラタモリ』の近江アナは、嫌味のないキャラで誰からも好かれた。

近江アナとともにMCに抜擢された博多華丸・大吉

 華やかさというか人気の点では、桑子真帆アナに軍配が上がるだろう。だけど桑子アナって、人心掌握術に長けてる感じするでしょ。タモリさん的“オジ様”の心をくすぐるのなんて朝飯前だ。

ADVERTISEMENT

 そこへいくと近江ちゃんはなあ。人は彼女を“天然”と呼ぶけど、私にはまだ彼女の心の内側までは見えない。

 さらに先週まで、その席に八年間も君臨していたのは、女子アナ界というより、NHKの象徴にまで昇りつめた有働由美子さんだ。

 大丈夫か、近江ちゃん。まるで姪っ子の入学式に臨む思いである。でも、番組が始まり、大吉がスタジオの雰囲気を「違和感しかないでしょ」と簡潔に表現して笑いが生まれたところで、近江ちゃんも、スーッとその場の空気にしっくり馴染んでいく。

「慣れるまでは、お互い、我慢のしどころですから」と大吉。華大もうまく呼吸を合わせてくれる。この直後だ。

「皆さんから、ファクスを……や、メールを募集しています」と近江ちゃん。いきなりヤメールって何よとゲストが腹を抱えて爆笑する。近江アナも一緒になって笑う。

 この日は「夫の転職」がテーマだった。本当はけっこう重い話だ。職場が変われば、環境は一変。「オレだって、柳澤さんの席だと思ってなかったもん」と華丸。そしてまた近江ちゃん「わたし、ロッカーの鍵をここに置いてます」と唐突に口にし笑いを誘う。

 いいね。朝のスタジオに自然な笑い声がおきる。いま、なんだかトゲトゲシイ空気がこの国を覆っているでしょ。アメリカを“世論が分断”みたいにいうけど、ニッポンだって国論二分ですよ。

 そんなときこそ、計算などと無縁の彼女がテレビに映ってると気持ちが和らぐ。冷凍庫にアジの干物が五十匹入ってますだって。いいねえ。

 武骨なタイプの男性は好みですか? 青木さやかに訊かれて「どうでしょう……」と答える近江アナ。そういう話し方が許されるのは「長嶋監督だけ」と大吉が突っこむ。なんかテレビ画面から清浄な空気が流れてくる気がする。

▼『あさイチ』
NHK総合 月~金 8:15~9:54
http://www1.nhk.or.jp/asaichi/