野次を浴びせる野党議員に「やかましいな」
前出の研修会では、政治家を「人が良いだけでやれるような職業ではない」と語ったという。不遜に見えるのは、麻生氏なりのこういう政治家スタイルもあるのだろう。
国会答弁中、野次を浴びせる野党議員に「やかましいな」と斜に構え、ドスのきいたべらんめぇ口調で凄みを利かせていたのは、つい最近だ。なめられるのが嫌いで、すぐに悪ぶる。悪ぶる、強がるのは、家柄がよくお金持ち、お坊ちゃん育ち故に、同級生らになめられやすかっただろう麻生氏なりの処世術だろう。でも、その態度が、威圧的でちょっと人を小馬鹿にしたようにも見えてしまうのは、育ち故か。
首を傾げて皮肉たっぷりに否定
太田理財局長が本省相談メモを国会で“公文書”と発言した時は、隣で踏ん反り不満そうに首を振っていた。翌日には「『えっ、相談メモが公文書?』というのが私の感じ」と口を尖らせ、首を傾げて皮肉たっぷりに否定した。自分の失言には悪びれずに釈明するが、部下の間違いは皮肉交じりに指摘するから、自分に甘く、他人に厳しくというイメージを与えてしまう。
時には失言が真実になるのも麻生氏ならでは。2月には佐川氏について「色々、虚偽答弁等々ありますけど」と、つい口を滑らせた。国税庁長官に適任と発言したのにもかかわらずだ。人間、そう思っていないと言葉になって出てこない。懸命に忖度する佐川氏の何が引っかかったのかわからないが、佐川氏の虚偽答弁を快く思っていなかったのだろう。言ってはいけないと思うことほど、口を突いて出てくるものだ。
立憲民主党の海江田議員に「虚偽答弁があることをお認めになったわけですね」と確認され、「虚偽答弁という指摘もありますが」と訂正。席に着くや渋い表情を浮かべて何やら呟くと、不安からか固く腕組みをしてしまう。「まずかったな」と思ったのか、その後は苦笑いしながら釈明していた。強がって、悪になりきれないのは、やはり育ちの良さだろうか。
それでも、答えられない質問には、うまくかわすが嘘はつかない。麻生氏は正直なのだ。改ざんを認めた会見では「組織ぐるみでは?」と問われ、左眉をピクリと動かし、「組織ぐるみという定義がよくわかりません」と冷やかに言い放った。今や財務省は組織ぐるみの隠ぺいが問われている。
今さら誰かに認めてもらう必要がない
他人に認められたいなどという承認欲求は、すでに自己実現して首相経験者となった麻生氏には、もはや必要ないはずだ。だから麻生氏は、世間やマスコミからの評価も気にならないし、気にしない。今さら誰かに認めてもらう必要がないから、周りに振り回されることも影響されることもない。いい人に見せる必要がないから自由闊達、豪放磊落、自分に正直。それが政治家・麻生太郎を不遜に見せている。
本質的には自分のことを「人が良い」と思っているのが麻生氏だ。いや、人が良いのである。そうでなければ、わざわざ政治家について「人が良いだけではやれない」と話しはしない。
政治は「結果が大事」とも、後輩議員たちに語ったという麻生氏。官邸と財務省の間に立ち、ここぞとばかりに凄みを利かせ、人が良いだけの政治家が出しそうな結果にならないよう、決着をつけられるのだろうか。