「文藝春秋」(2024年5月号)が、元都民ファーストの会事務総長・小島敏郎氏の手記「小池都知事『元側近』の爆弾告発『私は学歴詐称疑惑の“隠蔽工作”に手を貸してしまった』」をスクープした。小池百合子都知事が2期目の選挙を控えていた2020年6月、小島氏が、小池氏の“学歴詐称工作”に、はからずも手を貸してしまったという衝撃の内容だ。
そのきっかけとなったのは、小池氏の半生を、膨大な資料の精査と100人を超える証言者ヘの取材で明らかにした『女帝 小池百合子』(ノンフィクション作家・石井妙子氏 著)の単行本発売(2020年5月刊)だった。
本作は22万部を超えるベストセラーとなり、エジプトでの同居人・北原百代さんの証言は、かつてないほど小池氏をうろたえさせたという。現在は文庫化されており、「文庫版のためのあとがき」には、小島氏の手記で問題となっている「カイロ大学声明」の不可解さについても触れている。この「あとがき」を全文公開する。
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『女帝 小池百合子』を単行本として出版したのは2020年5月30日、それから約3年半の歳月が流れた。
原稿を書き終えたのは2020年の4月末。コロナ禍の最中、小池百合子は都知事として連日、フリップを手に記者会見を開き、何度目かの「小池百合子ブーム」が始まるかに見えた。原稿を印刷会社に渡す当日まで、テレビ画面の中に彼女の姿を追いかけ続けていたことを、今、思い出す。
コロナの影響で印刷所も通常のようには稼働せず、書店もいつ自粛要請の対象にされるかわからない。テレビのワイドショーは、「ロックダウン」「ステイホーム」といった刺激的な言葉を繰り出し、派手な立ち回りをする彼女を「総理よりもリーダーシップがある」と持ち上げていた。
テレビ番組は「ほぼ無視」
そうした中での出版となり、不安もあったが反響は大きく、主にネットメディアで取り上げられて本書は短い期間に版を重ね、発行部数は20万部を超えた。それに伴い、「女帝」という2文字は、小池百合子の代名詞として、または隠語として、雑誌や夕刊紙、ネット記事で使われるようになっていった。その一方で、テレビでは本書(あるいは本書の内容)が取り上げられることはなく、ほぼ無視された(それは今に続いている)。その、あまりの落差が私には不思議でならなかった。
本書の反響が大きかった理由には、出版直後の2020年7月に東京都知事選を控えていた、ということもあったろう。中には本書を「小池氏の都知事再選を阻止する目的で書かれた批判本」と受け取った人もいたようだ。だが、私の思いはそうしたところにはなく、もちろん選挙にぶつけて出版したものでもなかった。権力の階段を上り続けたひとりの女性の半生を、彼女を生み出した社会や時代とともに描き出したい。それが執筆の動機であり、私の目指したところだった。