2016年、青春アウトロー映画の秀作、『ケンとカズ』で鮮烈なデビューを果たした小路紘史。伝説の監督である長谷川和彦に絶賛されたデビュー作は自主制作だった。
それから8年の時を経て第2作『辰巳』が公開される。前作が2人の青年のノワール青春劇であるのに対し、今回はタイトルロールの主人公が年若い女を助けて逃げまくるノワール逃亡劇。
しかも再び自主制作で撮られたという。
「自由を得られる」から第2作も自主製作に
「前作で長谷川監督に褒めていただいたのは本当に嬉しかったです。
応援いただいたのに、当時は監督の作品を観てなくて、『2本しか撮ってないんだから観ろよ』と呆れられましたけども(笑)。
主演のカトウシンスケさん、毎熊克哉さんとは今も続く仲ですし、良いスタートを切れたと思っています。
以前『週刊文春CINEMA』でインタビューされた時に(2021年秋号)、『辰巳』のビジュアルも紹介していただきましたが、ちょうどその頃は編集中だったと思います。
撮影は19年の暮れから40日、その後追加撮影を15日間かけました。だから全編、どこか寒々しいルックになっているんです。
第2作も自主制作で撮ろうと思ったのは、やはり自由度を得られることです。自分も含めキャスト・クルーが満足のいく出来に近づけられることが大きかったですね」
銃のシーンは「ゴッドファーザー」シリーズをイメージ
自由度の大きさは脚本、キャスティング、ロケーションといったすべての工程に貢献したと小路監督は続ける。
「脚本には1年かけて臨みました。世界観は日本的な代紋背負った任侠の世界じゃなくて、香港や韓国、メキシコっぽい無国籍なものを想定しました。
そこから登場人物のセリフの掛け合い、主人公・辰巳が巻き込まれる麻薬を巡るトラブルなどを頑張って書きました。
好きなジャンル映画で、逃亡劇的な感じからは『グロリア』(80年)や『レオン』(94年)のテイスト。銃をぶっ放す場面の緊張感は「ゴッドファーザー」シリーズなどをイメージしましたね。
謎解きの要素が観客の皆さんに伝われば良いなあと、そこは気にしていますが。