2024年4月10日、静岡県知事の川勝平太氏が辞表を提出した。3日の臨時記者会見では「再出馬しない」と宣言している。直接の理由は数々の「不適切発言」だった。とくに4月1日の県庁入庁式の挨拶に批判が集中した。
「リニアのメドが立ったから」の背景
しかし川勝知事の“不適切発言”は書き出せばキリがない。辞任表明の夜、立憲民主党の渡辺周衆議院議員に「リニア新幹線のモニタリング会議の矢野弘典座長が国交相の前で『リニアはあと13年かかる』と明言した。私の責任は果たした」と話し、翌日には「リニアのメドが立ったから」とも発言。これは鉄道関係者にとって聞き捨てならない言葉だ。
リニアのメド、とは、3月29日に国土交通省が開催した「第2回リニア静岡工区モニタリング会議」で、JR東海が「2027年の開業は実現できない」と発言したことを指していると思われる。
川勝氏は3日の臨時記者会見で「南アルプスは2037年どころか、工事をやるとすればどうしても10年プラス2年プラス数カ月変わり、まだ工事もできる状況ではない。(約束していた工事車両用の道路の工事など)さまざまなことをやらなくちゃいけない」「場合によっては2040年近くになる。そうすると、最初に言っていた工事計画と全く違う。これは見直しをする、つまりいったん立ち止まって考え直すこと」と語った。
どうやら川勝知事の狙いはリニアの開業延期ではなく、「静岡工区」の計画自体を白紙に戻しやり直させることにあったようだ。つまり本人が過去に何度も語っていたように「静岡区間を通らず北へ迂回させたい」ということだろう。ただし、国の有識者会議で静岡工区の懸念事項は解決しているから、実際は迂回する必要はない。
川勝知事はJR東海の丹羽俊介社長を優秀だと持ち上げ、「計画を白紙で見直す」という丹羽社長の言葉を「ルートも含めた見直し」のように語ったが、この“白紙発言”は計画の「工期」つまりスケジュールだけを指している。川勝知事はこれを曲解して自分の手柄とし、成功体験として身を引くつもりのようだ。