「成功は、挑戦と失敗の繰り返しの先にある」と語る真山仁さん。累計270万部を超える『ハゲタカ』シリーズをはじめ、小説を通して日本社会が抱える課題を描いてきた。MCを務める経済番組「ブレイクスルー 不屈なる開拓者」(テレビ東京系、毎週土曜午前10時30分~)では、自ら現場を訪れ、未来を見据えて研究や開発を進める挑戦者たちを取材し、エールを送っている。そんな真山さんが自身の体験をもとに、不本意な仕事や異動を命じられたときの対処法を語る。
「小説家になるために興味のないことを書く訓練だ」
この春、自分の意に沿わない仕事に就かざるを得ない人もたくさんいると思います。しかし、自分が置かれた状況を否定するだけでは何も始まりません。
私は小説家としてデビューする前、10年くらい広告やプロモーションのライターをやっていました。依頼のほとんどは音楽や映画などのエンタメ系で、時に自身では理解できないアーティストの取材もありました。正直、取材したくないと思う場合もあった。当時人気絶頂だったバンドでさえも、私の心を掻き立てるものではなかった。
それでも、熱心に取材に臨みました。
それは「小説家になるために興味のないことを書く訓練だ」と考えていたからです。
プロモーションの依頼が来るということは、すでにある程度人気があり、さらにもう一押ししたいからです。私個人は好きではなくても、この音楽を聞きたい、この映画を見たいという人がいる。そういう自分とは全く違う価値観の人たちに届くものを書ければ、小説を書くときにも意に沿わない登場人物をリアルに描けると思ったんです。