40歳の主婦・茜はある日、中学時代の塾講師・今井が彫刻家になったことを知る。しかし彼が発表した上半身裸の少女の彫像が、同じ塾に通っていた親友・紫がモデルなことに気づいてしまう。26年前、14歳の紫と今井は「恋愛」をしていた――。
連載2周年を迎えた渡辺ペコさんの漫画『恋じゃねえから』は、「創作と加害」の問題をリアルに描き出して読者を毎月ザワつかせている。
未成年との恋愛は成立する? 「推し」のスキャンダルにファンはどう向き合えばいい? クリエイターの才能と性加害の関係は? 自分が当事者ではない「誰かの問題」との距離感は?
さらに漫画の中で起きる事件と並行するように、現実世界でも次々と過去の「性加害」が明らかになり漫画と現実がリンクしていった。まるで未来を予見していたようなこの作品は、どうやって描かれたのだろうか。著者の渡辺ペコさんに話を聞いた。
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「恋愛は『興味を持つのが難しいもの』でした」
――『恋じゃねえから』は、14歳の少女と成人男性の“恋愛のような”関係がスタートになっています。でもタイトルは、この関係が「恋愛」ではないと言っているようにも見えます。渡辺さんにとって「恋愛」ってどんなものなのでしょう?
渡辺ペコ(以下、渡辺) 私にとって恋愛は「興味を持つのが難しいもの」「扱うのが難しいもの」でした。だからこれまで、漫画のメインのテーマにしたことはなかったんです。でも恋愛や性的な関係性って古今東西いつでも特別扱いされ続けていますよね。いろいろな関係性や感情があるのに、恋愛や性的な関係ばかりが特別視されている。
表現は社会から生まれるものでもありますが、同時に社会に影響を与える力もあると思うので、こんなにも恋愛の表現を浴び続けると、性的な関係や恋人がいないことをすごく不幸で恥ずかしいと感じてしまう人が出てくるのも当然だよなと思っていました。
――連載が始まった2021年~2022年はまさに映画監督・園子温氏の性加害問題が注目されていた時期でしたが、その後も、ジャニー喜多川氏や松本人志氏など、芸能界の性にまつわる問題が続いています。この漫画と現実のリンクはどんな風にご覧になっていましたか?
渡辺 今あげられた方々の問題は大きかったですね。例えばジャニーズの問題は私にとって他人事ではなくて、かなり実感を伴う問題でした。