金夫人が最初に注目を浴びたのは2019年だった。尹大統領が検事総長に指名され、資産が公開の対象となったが、当時、公開された資産は約6億7000万円。そのうちの9割が金夫人の資産であることが分かり、何者なのかと話題になった。（今年3月に公開された尹大統領の資産は約8億3000万円、うち金夫人の資産は7億6000万円だった）
金夫人は30代半ばだった2007年に絵画展などを手がける文化・芸術企画社を設立し代表を務めており、業界では「マーク・ロスコ」展などを手がけたキュレーターとして実力を認められた存在だった。2012年に結婚した尹大統領とは12歳差だが、結婚については「持っている資産もなくて私じゃなければ結婚できないのじゃないかと思った」（韓国経済、2019年7月8日）と語っていた。
夫人の株価操作疑惑でも文政権のターゲットにされたが…
「ドイツモータースの株価操作事件」が浮上したのはこの検事総長に抜擢された聴聞会での質疑応答だ。国会議員から夫人の株価操作への関与について追及を受けたが、尹大統領は「（金夫人は）委託していただけで損失を被った」と全面的に否定している。
埋もれるかに見えたこの事件がメディアで盛んに報じられるようになったのは、この少し後。尹大統領が検事総長に就任し、曺国元法相の娘の不正入学疑惑などの捜査を指揮してからだ。この捜査を境に尹大統領は文前政権のターゲットになり、ソウル中央地検では専門家も交えたチームが再編され、仕手筋や当時の代表らが次々と逮捕されていった。
しかし文政権に追い詰められてもびくともしなかった尹大統領の人気は逆に上がり、「国民の力」の大統領候補者に押し上げられた。しかし党内でも、ライバル候補者からの追及が続き、金夫人の口座の一部を公開している。2022年3月の大統領選挙直前には金夫人も非公式で検察から召喚されたが、欠席しており、尹大統領の就任後に書類調査が行われ、事件はいったん終結した。
逮捕されたドイツモータースの代表（当時）らは現在、控訴審中で、一審では仕手筋のひとりは実刑の懲役2年が宣告されており、代表は懲役2年執行猶予3年罰金3億ウォン（3400万円）の判決を受けている。
