仲間のはずの与党からも「無罪ならば堂々と受け入れればいい」と突き上げが
「特別検事法」は検察ではなく第三者が捜査を行うもので、国会での可決が必要だが、過半数の議席を持つスーパー野党であれば可決は十分に可能だろう。実は昨年3月にも野党は「金建希夫人、ドイツモータース株価操作疑惑特検法」を発議し、昨年末には韓国国会で可決されたが、年明けすぐに尹大統領が拒否権を行使し却下していた。
野党は、この「特検法」を5月末から始まる次期国会で再び発議し可決に持ち込むつもりでいる。そうなれば、尹大統領はどう出るのか。再び拒否権を行使するのか、それとも受け入れて「特別検事」を任命するのかが大きな山場となる。
与党陣営からも「無罪ならば堂々と受け入れればいい」と突き上げられ、尹大統領は四面楚歌の状態だ。もし拒否権を再び行使すれば、どうしてそこまで夫人をかばおうとするのかと非難が飛び、さらなる求心力低下は避けられない。
ただ、捜査を受け入れた場合は金夫人の負担は大きく、さらに「関与なし」で捜査が終わればともかく、万が一金夫人が事件に関与していたことが明らかになれば、「妻は何の罪もない」と言い続けてきた尹大統領の責任は免れず、早期退陣が避けられない状況に追い込まれる。
今回の選挙で比例当選した「改革新党」のチョン・ハラム氏は「任期を(現行の5年から)4年に短縮し、二期制とする」改憲案を尹大統領に呼びかけたが、これがさざ波のように韓国政界に広がっている。
それにしても、金夫人にかけられた株価操作疑惑への経緯を見ていると、政界に基盤のない尹大統領を象徴しているようにも見える。
総選挙で、議席数では惨敗した与党だが、得票率の差はわずか5.4%ポイントだった。そのため保守層からは尹大統領がなんとか残りの3年を持ちこたえるよう、懇願にも近い声が飛ぶ。
4月16日には、尹大統領は総選挙後初めて立場を明らかにし、「より低い姿勢と柔軟な態度でより多くコミュニケーションをとり、私自身から国民の声を傾聴します」などと語ったが、早くも具体性に欠けるという批判が起きている。
こんな状態で、尹大統領は残りの任期を果たして全うできるのだろうか。韓国政界は、これから何が起きるか分からない、不穏な台風の目に入った。