300議席のうち野党175議席、与党108議席。韓国の総選挙は与党「国民の力」の大惨敗となった。
無残な与党大敗は、「尹錫悦大統領への不信」だ。古巣の検察や同窓のソウル大学法学部出身者ばかりを重用するお友だち人事に始まり、記者との朝のぶら下がりも、つぶやきが掬い取られてねじ曲げて報じられて以降、さっさと辞めてしまった。見ざる聞かざるの大統領は、金建希夫人が30万円相当のブランドバッグを受け取ったことについても曖昧な釈明に徹し、身内の保守派層からも批判を呼んだ。
積もり積もった不満が爆発したのがネギ事件だ。「ひと束価格が875ウォン(約100円)は妥当」発言が、物価高にあえぐ国民から総スカンを食らってしまった。また、「スタンスを保守に大幅に振り切っていてバランスに欠けているのも気になった」(40代前半の会社員)という人もいた。韓国の中道系紙記者は言う。
野党のターゲットは尹大統領の「リスク」、金建希夫人
「検察出身で政界に基盤がない。ですから、固い支持層だけが頼りだったのでしょうが、古いタイプの保守派像を前に出したことで中道層やZ世代も離れてしまった」
もはや「野党代表の李在明が真大統領(事実上の大統領)」とまでいわれる事態になり、尹大統領を早期退陣に追い込む野党のシナリオまで囁かれている。
野党のターゲットは尹大統領の「リスク」、金建希夫人だ。前回の大統領選挙時から、野党は一貫して金夫人を攻撃してきた。ルームサロン(日本でいうクラブ)で働いていたというのはフェイクニュースだったが、2021年に経歴詐称疑惑が出た時は本人も一部を認めて謝罪会見に追い込まれた。
そして今、野党が狙うのは「金建希夫人、ドイツモータース株価操作疑惑真相究明のための特別検事法(特検法)」の成立だ。この事件は、2009年から12年までの3年間、BMWの韓国公式代理店「ドイツモータース」の株価を当時の代表や仕手筋らが操作し、2000ウォン台(約200円)の株価を8000ウォン台(約800円)までつり上げた経済犯罪だ。金夫人がこの事件に関与していたのではないかという疑惑はずっと燻り続けてきた。